考察

誰が得するんだよこの本ランキング・2018

誰が得するかは知らないが、少なくとも私が得したことは間違いない、そんな年間ベスト本の紹介です。 実用書 ナシーム・ニコラス・タレブ 「反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」 MBAにおける意思決定の講義では、それぞれのシナリオごとの確率…

誰が得するんだよこの本ランキング・2017

誰が得するかは知らないが、少なくとも私が得したことは間違いない、そんな年間ベスト本の紹介です。 私は好きにした、君たちも好きにしろ、的な精神で自由に選出しています。 過去のランキングはこちら。 誰が得するんだよこの本ランキング・2008 誰が得す…

とくに買いたいモノはないけど、とりあえず5000兆円欲しい人のための経済学

Twitterで5000兆円欲しい!というネタが流行っていたが、その金で何を買いたいか誰も話しておらず、みんな夢がないなあ、と思った。とはいえ、とりあえずお金が欲しい、将来が不安だからいっぱい欲しい、できれば5000兆円欲しい!という気持ちはよくわかる。…

グロテスクなんだけど読み始めたら止まらない系のマンガ5選

グロいの苦手なんですけども、たまに面白いのもあるから困る。 メイドインアビス ぶっちゃけ、これを紹介したくてこの記事を書きました。「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されていたので読んでみたのですが、噂にたがわずスゴ…

誰が得するんだよこの本ランキング・2016

年末の恒例行事。この1年で僕が読んだ本からのベスト本の選出です(出版年ベースになっていないのでご留意ください)。かつては実用書・フィクションからそれぞれトップ10を選んでいたものですが、今年は忙しくてその気力がないので適当に紹介して、お茶を濁…

誰が得するんだよこの本ランキング・2015

年末の恒例行事。この1年で僕が読んだ本からのベスト本の選出です。

誰が得するんだよこの本ランキング・2014

年末の恒例行事。この1年で僕が読んだ本からのベスト本の選出です。昔は実用書・フィクションからそれぞれトップ10を選んでいたものですが、今じゃそんな余力はありませんので、トップ3だけ紹介します。正直、実用書の方はかなり不作で、例年だったら圏外だ…

誰が得するんだよこの本ランキング・2013

年末の恒例行事。この1年で僕が読んだ本からのベスト本の選出です。

誰が得するんだよこの本ランキング・2012

2012年は、中学高校時代に読んだ名作の書評をたくさんアップしました。ずっと温めてきたものを一挙に放出したので、例年よりもハイレベルのラインナップです。気持ちとしては「誰が損するんだよこの本ランキング」にしたいところですが、ブログ名との兼ね合…

円城党宣言――円城塔「道化師の蝶」

話をしよう。あれは今から36万……いや、3年前だったか……まぁいい。私にとってはつい昨日の出来事だが、君たちにとっては多分、明日の出来事だ。円城塔の講演を聞くという僥倖に、私はめぐり合っていた。お題はたしか、これから作家を目指す君たちへ、みたいな…

監獄の誕生―監視と処罰 / ミシェル・フーコー

「自分の頭頂部が天から吊り上げられているようイメージしてください」。 社会人がマナー研修でよく聞く言葉だろう。姿勢をよくするためには、背筋を伸ばし、筋力を使って胸を張り、顎を引かなくてならない。そのような一連の制御を自然にこなすために、かく…

社畜は共産主義革命の夢を見るか?――マルクス「経済学・哲学草稿」

意外に思われるかもしれないが、リバタリアンの中には奴隷契約の合法化を主張するものもいる。真に個人の自己決定権を尊重するのならば、「奴隷として生きる自由」ですらも、保障しなくてはいけないのだろう。 彼は、奴隷になることを選ばずに、自給自足の原…

日本で株主主権を叫んでも空しい理由――牧野洋「不思議の国のM&A」

コーポレート・ガバナンスの世界ではとにかく株主主権は人気のある概念だ。グリーン・メーラーを助長すると批判されたブルドックソース事件判決も、結局は「株主が決めたのだからよい」という点で正当化がなされている。 しかし、日本において株主主権を貫く…

誰が得するんだよこの本ランキング・2008

2008年の年間ベストはまだ作ってなかったので、今さらながら発表します。この年はほとんど小説ばかり読んでいたので、実用書1冊とフィクション19冊を紹介します。ここで挙げられている小説は正直面白すぎて、豊かな人生の定義は面白い本に出会うことだと断言…

誰が得するんだよこの本ランキング・2011

今年は震災や就活でぶっちゃけ本とか読んでる場合じゃないって感じだったんですが、なんだかんだ140本くらい書評を書きました。そこで恒例の年間ベストです。気持ちとしては「誰が損するんだよこの本ランキング」にしたいところですが、ブログ名との兼ね合い…

何度でも言う。「おやすみプンプン」は素晴らしい

破壊力。これはもはや表現力などという単語で形容できるレベルではない。この作品は破壊力がある。そう形容しないと気がすまない。それほど、この作品には心えぐられる。下衆がいっぱいでてきて、しかもその下衆が延々と自分語りするという点でドストエフス…

とあるフライング・スパゲッティ・モンスター教徒の信仰告白・解説付き

みなさまのご希望に従って本日これから講演するわけですが、わたしの講演をお聞きになると、きっとさまざまな意味でがっかりされることと思います。 「迫害としての政治」というのが講演のタイトルですので、わたしがいかにフライング・スパゲッティ・モンス…

高学歴就活生が読むべき4冊

就活生のみなさんは、そろそろ謎の焦燥感に身を焦がされてくるころでしょうか。試しにESを書いてみたら自分が何者でもないことに気づいて愕然とした、なんてこともあるかと思います。それが普通です。 しかし中には「俺っち高学歴で優秀だから大手の一社や二…

ウィトゲンシュタインはイーガンでも読むべき――鬼界彰夫「ウィトゲンシュタインはこう考えた」

ずっと気になっていた哲学者だった。なにかあるたびに「それって言語ゲームだよね」などとドヤ顔ではぐらかす連中に負けたくなかった、というのが動機である。あまり期待はしていなかったが、その分思わぬ収穫もあった。 以下は完全に「私」用のメモとして記…

大きな物語の不可能性――グレッグ・イーガン「万物理論」がすごい2

〈第5回誰得賞〉受賞作の「万物理論」について解説します。前回の解説では人為的なイデオロギーによる、大きな物語の維持が不可能になっている現状を指摘しました。それに対するイーガンの解は「たとえイデオロギーにおいて僕たちが無数に分断されていても、…

立法府を分割しよう、あるいは二院制の本来の趣旨――ハイエク「法と立法と自由III」

ハイエクによれば現代の議会制民主主義の最大の欠点は、法が恣意的に立法されている、ということです。立法府と行政府の境目があいまいなため、行政の都合(政府という組織の都合)のために法が制定され、法の本来の機能である権力の制限とそれによる人々の…

僕たちが全知なら正義は必要ない――ハイエク「法と立法と自由II」

ハイエクの独特な正義論は、僕たちの無知を前提にしています。僕たちの人生の目的はどのようなものかは多種多様ではっきりしないし、それゆえそのはっきりとしない抽象的なニーズたちの「どれがより重要でどれがより劣後されるか」の序列を知り得ることはで…

ノモスの選択としての、福祉国家の破綻――ハイエク「法と立法と自由I」

法学部生として最も感銘を受けた。 法学の講義って延々と解釈論をやるので、正直なにやってんだこいつら、と思っていまいした。たしかにそういった結論は導き出すことは可能だが、それとその結論が正当であることは別なのではないか、どのようにして正当な結…

十二支SFを考えてみる

SFに出てくる動物といえば猫のイメージがある。ハインライン「夏への扉」の影響だろうか。だが世に動物萌えの種は尽きまじ。猫SF以外にも様々な動物が取り上げた作品があるはずだ。というわけで十二支SFを考えてみる。

森村進教授の講演会 〈 これからの「家族」の話をしよう 〉 がすごい件 part2

ポリガミー(一夫多妻制・多夫一妻性・多夫多妻制) さて、残った時間で私は、多様な婚姻制度を認めてもいいんじゃないかという主張の中で、一番現在の我々にとっては反直観的な主張について検討したいと思います。それは、「3人以上でもいいんじゃないか?…

森村進教授の講演会 〈 これからの「家族」の話をしよう 〉 がすごい件 part1

2010年11月23日の駒場祭での森村進教授の講演の書き起こしです。非常に面白いですよ、これは。 東京大学法律相談所主催で行われた家族法改正講演会「これからの「家族」の話をしよう」では、夫婦別姓・同性婚などについて、大村敦志先生(東京大学大学院法学…

ノーベル賞作家 マリオ・バルガス=リョサ氏講演会 「文学への情熱ともうひとつの現実の創造」の要約 part3

フィクションの役割 アメリカ人のカップルはその後のマチゲンガ族のコミュニティで暮らした。マチゲンガ語を話す子どももできたほどだ。私はこのカップルに再度会ったとき、例の語り部のことを覚えているかと聞いたが、その返事はがっかりするものであった。…

ノーベル賞作家 マリオ・バルガス=リョサ氏講演会 「文学への情熱ともうひとつの現実の創造」の要約 part2

マチゲンガ族の語り部 ここでひとつ、個人的なエピソードについて語ろう。これは、文学が社会にとっていかに重要かを示すものだ。私は以前、人類学者の先住民の調査に同行して、ペルーの国土のアマゾンへと出かけたことがある。それにはアメリカ人の言語学者…

ノーベル賞作家 マリオ・バルガス=リョサ氏講演会 「文学への情熱ともうひとつの現実の創造」の要約 part1

行ってきました。 バルガス=リョサさんってイケメンで、こう、風格があって素敵ですね。まあ、氏の著作は一冊も読んだことがなく、完全にミーハーの心情で聞いてきましたので、かなりざっくりとした要約になります。しかも断片的なメモから再構成しているの…

哲学者・山脇直司氏への公開書簡2――リバタリアンは公共哲学の夢を見るか?

山脇氏からの反駁がありました。それぞれ (1)君の考えは経済的自由主義でない (2)公共哲学を切り捨てているのはリバタリアニズムの方だ (3)公共哲学は余裕ある個人のものでなく、市民のものだ、です。