SF

光速の半分のスピードで既知の宇宙を削ってくるソラリスの海――イーガン「シルトの梯子」

イーガンの作品はいつもぶっ飛んだ設定の中で、しかしその中でこそリアルな問題として立ち上がってくる「わたしがわたしであるということは、どういうことなのか」というごくごく個人的な悩みが作品のテーマになっており、好きなんですよね。 まず、ぶっとん…

「BLAME! THE ANTHOLOGY」読書会の模様

SF

映画化もされた伝説のネバーエンディング増殖都市マンガ「BLAME!」を原作に、今を時めく作家陣が好き放題書いたアンソロジー。誰得読書会の課題本にしました。読書会では10点満点で点数をつけて参加者一同で選評したのですが、一番高得点を獲得したのは飛 浩…

「アステロイド・ツリーの彼方へ (年刊日本SF傑作選)」読書会の模様

SF

2015年の日本SFのベスト短編集。先日の誰得読書会の課題本にしました。読書会では10点満点で点数をつけて4人で選評したのですが、一番高得点を獲得したのは伴名練「なめらかな世界と、その敵」(平均8.7点)。複数の世界をなめらかに渡り歩くことが日常化し…

「伊藤計劃トリビュート」読書会の模様

SF

国産SF界の期待の新星・伊藤計劃が若くして亡くなった後に刊行されたトリビュート短編集。 追悼のような辛気臭い短編は一つもなく、伊藤計劃が残した「テクノロジーによって変容する人間と社会」という問題意識を共有したうえで、伊藤計劃なんて超えてやるぜ…

盤上の夜 / 宮内悠介

SF

囲碁、将棋、麻雀といったゲームを題材にした短編集。将棋とチェスの原型になった古代インドのチャトランガを題材にした「像を飛ばした王子」が好きです。どの作品もアイデアは奇抜だし、読みやすくていいんですが、ときおりパッションあふれる感じになると…

私の恋人 / 上田岳弘

SF

何を書いても地球規模、少なくとも文明の栄枯盛衰は書くし、なんだったら人類も軽く絶滅させる……という作風で一部の界隈で人気を博している上田岳弘が、これまたすっごいパーソナルでテーマで勝負してきたなあ、と思って読んだ。内容は、理想の恋人を妄想す…

政治に巻き込まれる科学、それでも抵抗する科学者――上橋菜穂子「獣の奏者」

面白かった。一応ファンタジーのくくりにはなると思うんですが、ご都合主義的な魔法とかは出てこない。舞台は中世の技術レベルで、謎の巨大生物(闘蛇・王獣)を軍事利用している王国になります。主人公はこの動物の世話をする職業に就くのですが、その立ち…

記憶破断者 / 小林泰三

SF

面白かった。他人の記憶を自由に操れる超能力者と、記憶が数十分しか持たない一般人が戦うというもので、どう足掻いても勝ち目がないがゆえに、この状況をどうひっくり返すかに非常にワクワクさせられた。JOJOのスタンド使いしかり、普通こういうバトルもの…

月世界小説 / 牧野修

SF

すべてが言葉によって語られる世界で、言葉を消し去ろうとしてくる敵と、言葉を武器にして戦う勢力の言語戦。言葉を武器にするというのはメタファーではなく、そのままの意味で、たとえば、意味を破壊する爆弾がでてきて、その爆発にふれると、人でも建物で…

ゼンデギ / グレッグ・イーガン

余命少ない主人公マーティンが、自分の死後も息子が周囲の環境に惑わされることなく、健全に育ってほしいと願い、そのために自分の脳のパターンを電子的に模倣する代理人格を作り、そいつに息子の指南役を任せる、という話。これはSFとして考えると地味だが…

リングワールド / ラリイ・ニーヴン

SF

SFの古典。小林泰三が感銘を受けたと言っていたから読んだけど、正直、今となっては読まなくてもいいかなあ、という出来だ。たしかに、地球が何万個も入るような、超巨大構造物というだけで、大変ワクワクするものがあるし、そしてその構造物の内部の、なぜ…

深紅の碑文 / 上田早夕里

素晴らしい。ホットプルームによる劇的な火山活動と、火山灰がもたらす地球規模の寒冷化を目前に控えて、人類がどう行動するか、という話なんだけど、これがまたひどくつらい政治と外交と貧困の話になっています。この世界では、身体改造によって海洋生活に…

2014年最大の収穫かもしれない――上田岳弘「太陽・惑星」

とんでもない新人が出てきたな、と読了して思った。本書は中編が2つ入っているが、そのどちらも長編3冊分くらいを凝縮したような濃度となっており、大変読みごたえがあります。まず「太陽」。これは、人類の歴史をものすごくミクロな、俗っぽい個人の描写を…

NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション

SF

今回の誰得読書会の課題本。全体的に、まあまあ質の高い作品が集まったアンソロジーだと思います。 参加者の採点で総得点が最も高かったのは、野崎まど「第五の地平」。図を多用しながら、超ひも理論を解説しつつ、でもやっていることはバカSFという作品です…

ランドスケープと夏の定理 / 高島雄哉

SF

創元SF短編賞受賞作。著者は、東大の理学部物理学科卒で東京芸大の美術学部芸術学科卒で主夫という謎キャリア。テーマは、どんなに異なる知性同士でも、完全な辞書さえあれば会話が成立するかどうか、というもの。すなわち、昆虫と意思疎通できないのは、単…

さよならの儀式

SF

年間SF傑作選の2013年のもの。宮部みゆきが案外がんばっているのと、円城塔が安定して奇妙な味わいを出せていることを除き、見るべきものがなかった。このほか、編者に問題があるとしか思えないんだけど、話題性重視で過去の大家の未完成原稿とか、まだ日の…

歌うクジラ / 村上龍

最近の村上龍は「カンブリア宮殿」で、強引に経営者の成功の秘訣をまとめたりしていて、成功の十分条件でないもののをあたかも統計的に有意な十分条件であるかのように喧伝する自己啓発書のような胡散臭さを帯びていて、正直ちゃんとした小説を書いているの…

人類は衰退しました(全9巻) / 田中ロミオ

文明が一度崩壊して、種としての余生を過ごすようになった人類が、超絶テクノロジーを持つ謎の種族“妖精さん”に翻弄されるという話、ここに完結。とてもとても面白く読みました。のほほんとした文体と、それでも隠しきれない人間のどす黒さがにじみ出ている…

華竜の宮 / 上田早夕里

いやー、よかった。プルームテクトニクス理論を援用しながら、想像する海面200m上昇した近未来。肉体改造して海上での生活に適応したステートレスな新貧困層と、昔ながらの大地を基盤とする国家との対立。人間のDNAを基にして造られた舟の代わりになる巨大…

最果ての銀河船団 / ヴァーナー・ヴィンジ

SF

ヴィンジは「遠き神々の炎」が大傑作だったのですっかりファンになったんだけど、その前日譚(ストーリーは全く別)にあたる本作を読んで、あれ? という感じになってしまった。話は面白いのは面白いんだけど、どこか間延びしている感じが否めなない。ストー…

バビロニア・ウェーブ / 堀晃

SF

長い……。全長5380光年のレーザーの束が発見され、その近辺の基地で原因不明の事故で人が3名も亡くなる、という掴みは非常によかったのですが、謎が解明されるまでのプロセスが淡々としすぎていて、読んでる途中に何回も寝落ちしました。最後まで読んでも根源…

マルドゥック・ヴェロシティ / 冲方丁

「マルドゥック・スクランブル」の前日譚ですが、スクランブルのほうが面白かったかなあ。相変わらず超絶テクノロジー同士の能力者バトルものなんですが、文体が少し変わっています。体言止めが異常に多い、うるおいをそぎ落とした文体でして、まあ、これは…

極光星群

SF

年間SF傑作選の2012年のもの。この年は見るべきものがあまりなかった。10点満点でいうと、どれも4〜6点というレンジに収まっているため、特に採点はしてません。 以下、ネタバレありで解説。

拡張幻想

SF

年間日本SF傑作選の2011年のもの。 だいぶシリーズとして定着してきてはいるが、長くやっているため当たりの年、外れの年が出てくるのは仕方がない。この年は面白いものは抜群に面白いが、つまらないものがなんか多かった、という印象。ベストは円城塔「良い…

SF JACK

SF

先日の読書会の課題本。あんまり面白くなかったかも。読書会では10点満点で点数をつけて4人で選評したのですが、一番高得点を獲得したのは冲方丁「神星伝」(29/40)。動きがあって絵的に楽しい、との評価を受けました。第7回〈誰得賞〉を授与します。ちなみ…

神は沈黙せず / 山本弘

面白い。この世界はどこかのコンピュータ上で走らせているプログラムなのではないか? という、いわゆる仮想現実ものなのだが、それをサポートする材料として超常現象を扱っている。これには、UFO、UMA、心霊現象、空からカエルが降ってくる現象など、実在の…

メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット / 伊藤計劃

SF

シンガー「戦争請負会社」や「ロボット兵士の戦争」を読めばわかるように、戦争の現場は変容しつつあります。本作の舞台は、現実をさらに一歩進めたところにある、管理社会ならぬ管理戦場なのです。この設定は引き込まれます。中盤のドンパチはゲーム未プレ…

フューチャー・イズ・ワイルド / ドゥーガル・ディクソン

SF

2億年後までの地球の生態系をシミュレートした本。象と見違えんばかりの巨大イカなど出てくる生物のイラストが魅力的です。こういうのを子どもに見せれば生物学に興味持ってくれそう。映像版もあるようです。

あえて苦言を呈す――伊藤計劃×円城塔「屍者の帝国」

SF

伊藤計劃の未完の遺作の続きを円城塔が書く。死せる伊藤計劃、生ける円城塔を走らす。しかもその内容は死せる者たちがゾンビとして労働するという。いやあ、これはもう読まざるを得ないでしょう。でも、あれなんだよなー、冒険小説のくせにびっくりするほど…

BEATLESS / 長谷敏司

AI(人工知能)が人間よりも賢くなってしまった時代に、人間の役割はあるんだろうか。このテーマを軸に、あくまでもAIは人間の道具にすぎないとしてAIを排除する思想と、もう難しいことは全部AIに任せちゃってしまっていいんじゃないかという思想が対立する…