一般小説

ろくでもない結末全部乗せの短編集──平山夢明「或るろくでなしの死」

或るろくでなしの死 (角川ホラー文庫) 作者:平山 夢明 KADOKAWA Amazon 様々な死にまつわる短編集。ろくでなしだったり、ごくつぶしだったりが死んでいくので、タイトルの時点ですでに出オチ感もあるのだが、予期された死という結末に向かっていくページをめ…

青春とは一体なんだったのか――恩田陸「夜のピクニック」

夜のピクニック(新潮文庫)作者:恩田 陸新潮社Amazon何かを定義するのは、哲学者の仕事であるらしい。世界とは何か。時間とは何か。認識とは何か。言葉とは何か。定義されるのは、きまって、抽象的で、思弁の対象とすることが格好いいものだ。そして哲学者…

自分の欲望を持たない者は、他者の欲望の対象を欲望するしかない――西加奈子「うつくしい人」

うつくしい人 (幻冬舎文庫)作者:西加奈子幻冬舎Amazonそのような者は、誰かがほしがるものしか、ほしがることができない。本作の主人公は、まさに、他者の欲望に欲望していたのであり、そのどこまでもいってもキリのない地獄に息苦しさを覚えていた。一方で…

ストーナー / ジョン・ウィリアムズ

ストーナー作者:ジョン・ウィリアムズ作品社Amazonよかった。非常に地味な主人公の地味な一生を淡々と描いた小説なんだけど、でもだからこそ万人の心を打つ作品となっている。だって、我々はみな凡人なのだから。主人公のストーナーはクソ真面目な文学部助教…

死霊 / 埴谷雄高

死霊I (講談社文芸文庫)作者:埴谷雄高講談社Amazonマジでなにが面白いんだ、これ……。事件らしい事件は何も起こらず、ひたすら思弁的な登場人物がわけのわからない妄想をしゃべり続けるだけ、という話で、しかもその内容があまり面白くない。例えば、私は私で…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 / 村上春樹

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)作者:村上春樹文藝春秋Amazonまず初めに断っておくが、村上春樹はたいして好きじゃなかった。メッセージがないので、読んでも、だからどうした、というふうにしか思えなかった。また、現実離れした会話…

カンガルー・ノート / 安部公房

カンガルー・ノート(新潮文庫)作者:安部公房新潮社Amazon足のすね毛が全て抜け落ち、かいわれ大根が生えてきてしまった男はやむなく皮膚科を訪ねる。しかし、治療の目途は立たず、ベッドに括りつけられたまま男は下水道に投棄され、そのまま地獄と思しき所…

箱男 / 安部公房

箱男(新潮文庫)作者:安部公房新潮社Amazon箱男というのは、傍から見ると段ボールを頭からかぶった浮浪者にすぎない。しかし、箱男はある意味で特権的な地位にいる。彼が体現するのは、いまだかつてない斬新な、のぞきだ。箱男は、自分以外の世界すべてに対…

光圀伝 / 冲方丁

光圀伝 角川文庫合本版作者:冲方 丁KADOKAWAAmazon水戸黄門で知られる水戸光圀の話。徳川幕府が天下統一してしまったあとの、武士たちの存在意義が揺らいでいる時代。その中で光圀は史書編纂に取り組む。人が生きた証を歴史として残すことで、その人はたしか…

最後の家族 / 村上龍

最後の家族 (幻冬舎文庫 む 1-20)作者:村上 龍幻冬舎Amazon村上龍の小説のなかでは一番とっつきやすい。なぜなら、特殊な主人公が出てこないからだ。たとえば、同じく引きこもりを題材にした「共生虫」においては、自分を特別だと勘違いしている主人公が、そ…

天人五衰―豊饒の海・第四巻 / 三島由紀夫

豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島新潮社Amazon茫然としてしまった。なんなのだ。この終わり方は。76歳になってしまった本多は、今まで築き上げてきた理知に飽き、老いの醜さに蝕まれている。そんな本多が、清顕の生ま…

暁の寺―豊饒の海・第三巻 / 三島由紀夫

豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島新潮社Amazon恍惚のかたまりを輪切りに薄く切って、その一枚一枚を頬張るような、そんな体験でした。 本書の主人公は、肝心なところで人生を思い通りにできなかった本多なのですが、彼…

奔馬―豊饒の海・第二巻 / 三島由紀夫

豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)作者:三島 由紀夫新潮社Amazon三島由紀夫は「豊饒の海」の第四巻の原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地に日本刀を持って突入し、総監を監禁する、クーデターを促す演説をする、そして割腹自殺をする、という謎…

春の雪―豊饒の海・第一巻 / 三島由紀夫

春の雪 (新潮文庫)作者:三島 由紀夫新潮社Amazonかつてこれほど僕をにやにやさせた小説があっただろうか。個人的にはドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を完全に超えた。成金の侯爵の息子で優雅な美少年を地で行く清顕と、大審院判事の息子でとにかく有…

永遠の旅行者 / 橘玲

永遠の旅行者(上) (幻冬舎文庫)作者:橘玲幻冬舎Amazon中学生の僕の心を最も揺さぶったのが村上龍「希望の国のエクソダス」だとするならば、大学生の僕が最も影響を受けたのはおそらく本書ではないか。 なにせこの本を読んで法曹をめざしたくらいだ。結局、…

ノルウェイの森 / 村上春樹

ノルウェイの森 (講談社文庫)作者:村上春樹講談社Amazon僕にはハルキストの友人がいる。ハルヒストの友人もいるが、彼については次の機会に譲るとして、今日はハルキストだ。こいつには個人的にかなり助けられたので、その彼が好きな村上春樹をdisるのは気が…

永遠のジャック&ベティ / 清水義範

永遠のジャック&ベティ (講談社文庫 し 31-4)作者:清水 義範講談社Amazon「これはペンですか?」 「いいえ、ジャックです」 というような、認知症じみた会話が英語の教材においてなされているわけですが、本作は彼ら登場人物たちが中年になってからばったり…

ゲームの達人 / シドニィ・シェルダン

ゲームの達人 上作者:シドニィ シェルダンアカデミー出版Amazon成功を夢見る青年が裏切られながらもどん底から這い上がっていくストーリー。とにかく楽しい小説。サクセスストーリーというありきたりな展開なんですが、軸がぶれていないというか、王道を邁進…

この国には何でもある。だが、希望だけがない――村上龍「希望の国のエクソダス」

希望の国のエクソダス (文春文庫 む 11-2)作者:村上 龍文藝春秋Amazon傑作。日本の教育には問題点が主に2つあって、それは「いじめ」と「学校教育が社会に出て役に立たない」というものです。村上龍はこれらの2つの問題を抜本的に解決するために、全国の中学…

All you need is survive――村上龍「五分後の世界」

五分後の世界 (幻冬舎文庫 む 1-1)作者:龍, 村上幻冬舎Amazon僕が高校生のころ最も好きだった小説。 この小説に支えられてこの歳まで生きてきました。何度も再読して、もはや血肉と化しているがゆえに、この小説を乗り越えることが個人的な目標であったとさ…

「善人」は野たれ死ね――村上龍「愛と幻想のファシズム」

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫 む 3-10)作者:村上 龍講談社Amazon苛烈な一冊。中南米の国家債務のデフォルトを機に世界的な金融危機が起こるが、そうした状況に対して何も抜本的な対策をできない日本政府に人々はうんざりしていた。そこで強い指導力…

ペテルブルグ / ベールイ

ペテルブルグ(上) (講談社文芸文庫 ヘA 1)作者:アンドレイ・ベ-ルイ講談社Amazonどういうことだ。まるで意味がわからんぞ。ナポコフが20世紀を代表する文学の一つとか褒めてたらしいけど、21世紀の現在にこれを読む価値はまったくない。完全に時間の無駄。話…

海辺のカフカ / 村上春樹

海辺のカフカ(上)(新潮文庫)作者:村上春樹新潮社Amazon主人公のカフカ君はとても痛い少年なのだけど、まったくそれを感じさせない強さがある。全裸で生活するシーンとか僕はけっこう好きで、正直「何してんのこいつ」という感じなのだが、不思議となじん…

KYOKO / 村上龍

KYOKO (幻冬舎文庫 む 1-12)作者:村上 龍幻冬舎Amazon僕はダンス自体はたいして好きじゃないんですが、ダンスの話はわりと好きで、この小説もダンスが救いになってるとてもいい話です。主人公は昔ダンスを教えてくれた米軍兵士に会いにアメリカまでわざわざ…

虚人たち / 筒井康隆

虚人たち (中公文庫 つ 6-21)作者:筒井 康隆中央公論新社Amazon作中の登場人物がすべて自分たちは虚構の住人であることを自覚しており、あまつさえ作者の心情を推測しながらこれからのストーリー進行を予測したりするメタフィクション。 作者がなにかを描写…

最後の伝令 / 筒井康隆

最後の伝令(新潮文庫)作者:筒井 康隆新潮社Amazon筒井康隆の中期の短編集。好きな作品が多く、個人的にはかなり満足のいく本でした。 小学生の日記風ファンタジー「北極王」、森林伐採について樹木自身が異議申し立てる「樹木 法廷に立つ」、異国の変わっ…

ヘル / 筒井康隆

ヘル (文春文庫 つ 1-14)作者:筒井 康隆文藝春秋Amazon最近の筒井康隆って老いとか死の話ばっかでちょっと疲れるよね、と改めて思うことになった長編。地獄を書いた作品なんですが、仏教的な地獄ではなく、「いやーマジで地獄だったよあの日は」と軽く愚痴る…

マネーロンダリング / 橘玲

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)作者:橘玲幻冬舎Amazonオフショアを利用して税務署をちょろまかすという、それだけの話なのでお金持ちでもないかぎり興味ないテーマでしょう。ただこの小説のいいところは、そういった本筋以外にもちょっとした豆知識がふん…

共生虫 / 村上龍

共生虫 (講談社文庫 む 3-28)作者:村上 龍講談社Amazon村上龍がよく描写する感覚として、薄い透明なビニールみたいなものが自己と周囲のあいだにあって、そのせいで現実がひりひりとした感触を失い、ぬるま湯の底でゆっくりと死んでいくような感覚、というも…

白い城 / オルハン・パムク

白い城作者:オルハン パムク藤原書店Amazonトルコ人ノーベル賞作家の出世作。オスマントルコの学者とその奴隷であるヴェネツィア人の話。東西のエリート同士の交流ということで、当初は天動説や地動説について議論したり、花火の調合とかして楽しいのですが…