虚人たち / 筒井康隆

作中の登場人物がすべて自分たちは虚構の住人であることを自覚しており、あまつさえ作者の心情を推測しながらこれからのストーリー進行を予測したりするメタフィクション
作者がなにかを描写するまでは、作中の世界は存在しなく、仮に存在するとしてもそれはまだ一切の特徴が欠落した「なにものでもない」なにかでしかありません。天気でさえ晴れなのか曇りなのか、描写が作者になされるまでは定かではなく、まさに白紙の状態から物語は始まるのであります。
すべての虚構はえてしてそういうものなのですが、このお約束を晒しあげることで、奇跡の実験小説へと本作は昇華している。出落ちでは、ある。