一般小説

怪笑小説 / 東野圭吾

えっと、そんなに面白いですか? ふだんはミステリ書いてる著者の笑える短編集ということなんですが、あんまり笑えません。ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束」のパロディである「あるじいさんに線香を」だけは唯一よかったです。がんばってるじじいカ…

権現の踊り子 / 町田康

町田康の短編集を読むのはこれで2冊目だけど、長編と比べてだいぶカオス。なにこれ。しょうもない人間としょうもない付き合いをして、正体不明の怒りに駆られるようなそんな作品。たとえば表題作なんか「権現の市」に出かけていった主人公がちょっと怖いお兄…

わたしのグランパ / 筒井康隆

刑務所帰りの祖父と女の子の話。この祖父がやたらカッコいい。そこそこ面白かったです。ただやっぱり物足りないのは、作者の「毒を抑えて万人受けするエンタメ路線を狙っていこう」という意図が透けて見えることです。他の作品(とくにエッセイ)であんだけ…

モザイク / 田口ランディ

うーん。これはどう評価したものかなあ。一応「コンセント」・「アンテナ」に続く三部作の完結編なのだが、前二作に明らかに見劣りする出来で、あの傑作を生みの親である著者がいったい何を食ったらこんな駄作を書けるのか僕にはまったく理解できない。内容…

アンテナ / 田口ランディ

妹は失踪し、母は新興宗教にハマり、弟は発狂する。そんな崩壊寸前の家族をなんとか支えようとする主人公はなぜかSMにハマる。なんというか、これだけ書くと本当にどうしようもない話なのだが、それでもこの話はありとあらゆる困難を解決して一定の結末にち…

コンセント / 田口ランディ

毒にも薬にもならない本が多い中、これほど毒になる小説もめずらしい。突然電池が切れたように生きるのをやめた引きこもりの兄の謎を追うミステリとして、話は進む。だがそれは見せかけだけで実態は強烈なオカルトだ。この作品で描かれるオカルト内容は、気…

コインロッカー・ベイビーズ / 村上龍

僕たちは世界を変えることができないなんて白けてるやつはいなかった。かつては。 村上龍が高校生だった60年代、安保闘争は現在のしょぼい就活反対デモや格差反対デモの比じゃないくらい熱気があった。社会主義者たちの革命によってつくられたソ連がまだ元気…

人間小唄 / 町田康

ひどい。とある作家がわけのわからぬ連中に監禁される、そして(1)短歌をつくる、(2)ラーメンと餃子の人気店をつくる、(3)暗殺をする、という無理難題を押し付けられ、それを無理やり遂行していくという話である。ひどい。他の部分もまったく意味不明な…

下妻物語―ヤンキーちゃんとロリータちゃん / 嶽本野ばら

ゴスロリという文化がどんなものかイマイチよくわからないのですが、なんとなくメイド服チックな衣装をこさえてはそれを着て悦に浸るという、そんなイメージです。で、そんなゴスロリをやるには、やはりそれなりの雰囲気が必要であり、西洋の古城とまではい…

男子の本懐 / 城山三郎

大震災、世界不況、デフレ、とまるで現在の日本かって感じの20〜30年代。人々の不満は高まるは、関東軍は無暗にがんばるわ、政治家は撃たれるはで、大変だったのですが、この小説はそんなやんちゃな時代に己の理想を貫こうとした2人の政治家の物語です。首相…

存在の耐えられない軽さ / ミラン・クンデラ

もう古典を読むのはやめようかな。そう思わせた一作でした。これだから古典は嫌なのです。地雷が多すぎる。太宰治「人間失格」みたいな、リア充が繊細な悩みをもってうだうだと女たらしするという内容で、しかも浮気されてる女の視点からその女たらしっぷり…

バイアウト / 真山仁

「ハゲタカ」の続編。前作では非上場会社の経営権をいかに握るかというディールが中心だったのですが、今度は上場会社がターゲットです。当然、敵対的TOBのような株式市場を舞台にした戦いになってくるので、会社法学習者にとっては前作よりも面白いかもしれ…

ハゲタカ / 真山仁

金融機関志望の人はみんな読んでると思って、あえて今まで読んでなかったのですが、やっぱり傑作です。ハゲタカファンドという、ボロボロになった会社の株や債権を買い叩いて高値で転売するビジネスの話なんですが、会社をめぐる制度がどのように使われてい…

空中ブランコ / 奥田英朗

気の狂ったような精神科医が気の狂った連中とわいわい楽しくやっているうちに、ある種の解決に至るというパターンを何度かやる。そんな短編集。とがっているものが怖いとかやってはいけないことやってしまいたくなる、強迫観念に囚われた患者が多いです。面…

黄金旅風 / 飯嶋和一

江戸時代、まだ鎖国する前の長崎が舞台の歴史小説。当時の社会経済がどのようなものだったかを知りたいならなかなかいい作品です。オランダなどの外国との立ち位置や幕府との距離感などなかなか読みごたえがあります。しかし如何せん説明的な描写が多く興味…

文学部唯野教授の女性問答 / 筒井康隆

「文学部唯野教授」が女性の悩みに答えるという企画。まあ文学的な話にはほとんどならず、単なる人生相談が8割です。トークの痛快さだけでほぼ持っているような状態なので、好きな人だけ読んだらいいですよ。

文学部唯野教授のサブ・テキスト / 筒井康隆

「文学部唯野教授」を読んだ後もっと教授のトークを聞いていたい! と思わず思いましたが(どっちだ)、その願いが本書で叶えられました。教授のインタビューと、ポスト構造主義の手法を用いてポスト構造主義を茶化した評論がひとつ入っています。内容はかな…

大いなる助走 / 筒井康隆

同人誌で腕を鍛えて作家になる、というルートはいまでこそあんまり聞かないですが、筒井康隆はまさにそうしてデビューした作家でした。本作は、文学を志す者同士お互いに切磋琢磨しあうという美しい外観に反して、同人の内部はドロドロしてるよ、と暴露する…

西の魔女が死んだ / 梨木香歩

思春期の女の子がちょっと不思議な場所で居候するという「千と千尋の神隠し」的なストーリーです。まあファンタジーではないんで不思議っていってもそこまでではないんですが。しかし、これはねえ。なんというか、あまりにも安易。安易に決着をつけすぎてる…

グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド

ギャツビーという成金野郎のくせに異常なほど純朴な男の話です。こいつがいかにグレートな野郎か期待していたのですが、さしてグレートではないですね。話自体もしょうもない痴情のもつれみたいなものですし。とはいえね。そんなグレートではない、どちらか…

後宮小説 / 酒見賢一

架空の歴史書を紐解きながら当時の情景を小説化した、という設定の小説です。舞台はまあ中国の王朝ですね。こういう歴史ものはやたらと表現がくどかったりして読む前に身構えてしまうのですがこれは例外的にさくさくと話がすすんでよかったです。むしろ軽薄…

セピア色の凄惨 / 小林泰三

あれ、小林先生が新刊出してる。ぜんぜん気づかなかった。というわけで今回はSF色の無いホラーの連作短編集です。変なことにこだわりすぎているダメ人間が出てくるので、身に覚えのある読者にとっては読むと胸が痛くなってくるでしょう。逆にあまりにもダメ…

ゆがんだ闇

短編ホラーのアンソロジー。鈴木光司や瀬名秀明といった有名どころもいるが、なんといっても小林泰三の作品が圧倒的。正体不明のなにかがひたひたとやってくるだけの作品なのですが、なかなかおぞましいです。

iレディ / 吉村達也

ネットを通して人格が汚染されるというストーリーとだけ聞き、バイオハザードのサイバーパンク版かなと期待したのですが、実際に読んでみるとあまりのB級臭におもわず噴飯いたしました。いい年こいたおっさんがネカマになって釣りに興じていたら、そのネカマ…

半島を出よ / 村上龍

名作。基本的に村上龍の小説は没交渉な性格の人間に居心地いいように作られています。要するに「普通」とか「一般」から浮いたアウトサイダーやマイノリティに向けて書かれた小説なので、そういったある種の痛々しさ・普通にするすると生きていけない不器用…

DIVE!! / 森絵都

森絵都がスポ根書いたら存外に面白くて困ったでござる。なんというか、ジャンプで突発的に連載が始まる、あえてマイナーなスポーツを題材にしたマンガみたいな感じかな。飛び込みという絵的にも地味な競技でどこまで熱いバトルが描けるか、期待してもらって…

傭兵ピエール / 佐藤賢一

歴史小説はそんなに好きじゃないんですが佐藤賢一だけはガチ。英仏百年戦争を舞台にした本作も中世の生活環境がむき出しで描かれていて、ああこれがこの時代なんだなあと、むせるほどの時代臭を感じさせます。まあ、ストーリーはジャンヌ・ダルクが実は○○だ…

12皿の特別料理 / 清水義範

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 / 村上龍

女子高生が援助交際を決意する話。その動機というのが12万8千円のインペリアル・トパーズを渋谷で見つけて、どうしてもそれが欲しくなってしまったというものです。欲しすぎてヤバイということではなく、それを今手に入れないと明日にはもう欲しくなくなって…

レヴォリューションNO.3 / 金城一紀