ストーナー / ジョン・ウィリアムズ

よかった。非常に地味な主人公の地味な一生を淡々と描いた小説なんだけど、でもだからこそ万人の心を打つ作品となっている。だって、我々はみな凡人なのだから。主人公のストーナーはクソ真面目な文学部助教で、妻との関係がうまくいかなかったり、七面倒な学内政治に巻き込まれてうんざりしたり、災難な目にあっているんだけど、だけど、なかなかそれを一挙に解決するようなソリューションとかないじゃないですか。どうにかしないといけないとはわかりつつも、どうにもできずに、それでも日々の仕事や育児はやらなくてはいけないので、受け身になってしまうのも仕方がないじゃないですか。
これが、村上春樹だったら、お前それ本当に必要かっていうおしゃれ要素があったり、なんか余裕こいているとしか思えないバー描写が出てきたりとして、隠しても隠し切れない自己愛に辟易としてしまうのですが、ストーナーは偉いのでそんなことない。もう、淡々と、己の凡庸さを自覚しているし、その不足感を、謎の転回によってヒロイックに、悲劇的に、語ったりはしない。