しかし、そんな程度の機械学習よりも、現実の中高生の読解力が低いことが判明。彼らは、文章の意味を理解することなく、単語の羅列から一番それっぽい回答を選択している。このままでは、AIを導入する企業との競争に既存企業が負けて、今後20年で大規模な失業が発生するというシナリオが予想される(要約)。
機械学習、深層学習、強化学習
- 機械学習:人間が設計した教師データをもとに、人間と同じようにパターンを認識する統計アルゴリズム。人間がイチゴだと思った画像パターンを、機械もイチゴだと認識できるようになる。この際、人間が教師データの「イチゴらしさ度」をまず設計する必要があるのが手間。イチゴを構成するそれぞれの特徴の重み(特徴量)は、実の赤さと緑のヘタとのコントラストの重み=0.7、種と実のコントラスト=0.5、というように数値で表現され、重みを調整していく過程を「学習」と呼ぶ。この学習が済むと、人間に近い形でパターン認識できるようになる。
- 深層学習:どの特徴に目を付けるべきかということ自体を機械に検討させ、人間の直観頼みだった特徴量の設計を自動で最適化できる。これがすごい。
- 強化学習:教師データ無し機械学習。目的や目標と制約条件が記述できる課題ではうまくいく。自動車に「なるべく早く目的地に到着する」という目標を与え、「障害物にぶつからない」という制約条件を与えて、勝手に試行錯誤させる、など。
数学、計算、コンピュータ
- 数学が記述できるのは、確率・統計・論理の世界であり、この世界のごく一部。なお、確率と統計はアプローチの仕方が逆。確率は理論から結果を予測するが、統計はデータが先にあって、データの分析で仮説を見つける。
- コンピューターは計算機なので、できるのは計算だけ。計算するということは、認識や事象を数式に置き換えること。
- 今のところ数学で数式に置き換えることができるのは、論理的に言えること、統計的に言えること、確率的に言えることだけ。人間の認識は、すべて論理・統計・確率に還元できないので、コンピューターに人間と同じ認識をさせることはできない。
大規模な調査から判明したファクト
- 中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない
- 学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
- 読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
- 通塾の有無と読解能力値は無関係
- 読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない
AIにはできない仕事
- 著者は、AIには原理的にできない、文章の意味を理解する能力(読解能力)を高めることが、今後重要になると主張する。
- また、AIに仕事を奪われにくい「10〜20年後まで残る職業トップ25」という研究結果も紹介している。こちらも、相手の言っていることを理解することが必要であり、かつ、人間が相手することが特別な価値を生む職業が多い。
- 抜粋すると、レクリエーション療法士(1位)、メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー(3位)、心理学者(17位)、臨床心理士・カウンセラー・スクールカウンセラー(24位)、メンタルヘルスカウンセラー(25位)、など。
AIを導入する企業と、そうでない企業との競争
- なお、AIが仕事を奪うというのは比喩であり、正確には、AIを導入し経営を効率化させた海外企業との競争に、日本の非効率な経営する企業が負ける、というのが今後起こる事。
- 日本企業の経営者は負けじと、人件費を節約するので、どんどん労働環境がブラック化する。
- このほか、経営目標だけは高く掲げて、あとは無策で現場に丸投げするインパール作戦が横行する。疲弊した現場は粉飾についつい手を染めてしまう。労働のブラック化と粉飾の多発は、すでに始まりつつある(意訳)。