ライフサイクル イノベーション / ジェフリー・ムーア

イノベーションとは「いかにして差別化を図るか」という問いへの答えらしいです。「業界首位の商品をパクってキャッチアップする」とか「コストを削減する」とかもイノベーションによってできますが、本書の主題はやはり「差別化のための手段」です。どんな画期的な商品もどんどん陳腐なコモディティへと化していく中で、他社との差別化をはかるというのは大変重要です。
本書は、企業の種類(少数の顧客に複雑な商品を売る企業か、多数の顧客に単純な商品を売る企業か)・市場の成熟度合いといった分類から、どのようなイノベーションが選択肢になるかを機械的に導くことができるメソッドを提示しています。これを使えば誰でも事業戦略らしきものを作れるので、コンサル志望の人は読んでみるといいと思います。
ただ個人的には、過去の成功事例をカテゴリーに分けて成功法則を抽出しているアプローチに無理を感じます。そういった帰納法的なアプローチでは、「将来どんなものに価値が宿るか」という不確実性とやり合わなければならないビジネスの世界では通用しない気がします。その点、過去の失敗事例から教訓を得ようとしたクリステンセン「イノベーションのジレンマ」のほうがはるかに示唆的で納得がいきました。