ペテルブルグ / ベールイ

どういうことだ。まるで意味がわからんぞ。ナポコフが20世紀を代表する文学の一つとか褒めてたらしいけど、21世紀の現在にこれを読む価値はまったくない。完全に時間の無駄。話の筋は単純で、政府高官へのテロに当の息子が関与しているというだけなのだが、余計なごちゃごちゃとした描写の海に溺れてしまいストーリーとかどうでもよくなる。その描写も夢の話だとか、作者が読者に語りかけたりとか、空間とか時間の蘊蓄とか、当時としては斬新だったのかもしれないが今ではまったく凡庸。
同じはちゃめちゃやるなら筒井康隆「パプリカ」を読むし、メタフィクションが読みたいなら筒井康隆「虚人たち」を読む。

読書会でも一人を除いて全員が低評価でした。高評価だったやつは、この話の筋を分断する無意味な描写に爆笑したと言っていましたが、理解できない。短編でやるならまだしも、こんな出落ちみたいなものを延々と長編でやるのは困る。どうやらロシア文学頂上決戦はドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」の圧勝に終わりそうです。

まあ、唯一よかったのは次の文章ですね。ゼネラル・ストライキの描写です。

 人人は黙したまま百の足にじっと見とれていた。群は這っていた。流れるように通り過ぎて行く脚また脚の上で、よちよちと動きがさがさと音を立てていた。群は昆虫のような大切の貼りあわせから出来ているが、その体節が人間の胴体なのだ。
 ネフスキイ大通りには、人間などいなかった。這い回り大声でわめく百足がそこにいたのだ。