箱男 / 安部公房

箱男というのは、傍から見ると段ボールを頭からかぶった浮浪者にすぎない。しかし、箱男はある意味で特権的な地位にいる。彼が体現するのは、いまだかつてない斬新な、のぞきだ。箱男は、自分以外の世界すべてに対するのぞきを行っている。のぞきとは、相手から見られることなく、一方的に相手を見ることである。のぞきを行うものは、たいてい物影に隠れてこそこそしている。しかし、箱男はその物影を持ち運べる段ボールにしてしまった。こうすることで、何気ない風景が全てのぞきの対象として立ちあがってくる……!
うん。まあ、そんな話だ。ストーリーはあってないようなものだし、一体誰がこの文章の書き手かという作中で提示される謎もどうでもいいし、正直なんだこれ感は否めない。面白そうに紹介しようとしたけど無理。だるい。こんなのを名作扱いするのは文学スノッブだけだ。
そうだなあ。信頼できない語り手、細切れの文章、作中作、こういった要素を兼ねた作品なら夢野久作「ドグラ・マグラ」とかがいいんじゃないですかね。