人類は衰退しました(全9巻) / 田中ロミオ

文明が一度崩壊して、種としての余生を過ごすようになった人類が、超絶テクノロジーを持つ謎の種族“妖精さん”に翻弄されるという話、ここに完結。とてもとても面白く読みました。のほほんとした文体と、それでも隠しきれない人間のどす黒さがにじみ出ている小説で、どこかしら英国紳士的な風情があります(偏見)。以下ネタバレ。
最初は、妖精さんというのは、人類が衰退する前に作り上げた超絶テクノロジーの結晶で、自律型ナノマシンなのではと思っていたのですが、どうもそうではなく、メルヘンチックな謎パワーということで、少し残念ですね。まあ、なんでもかんでもナノマシンのせいにしておけばいい、という悪習がSF界隈にありますから、あえてのこの外し方にそんなに異議はありません。また、この世界ではどうやら魂(と呼ばれるこれまた謎パワー)を持っているのは人類だけなようでして、その魂に魅かれて、魂を模そうとして、形なき根源的世界から、にょろりにょろりとやってきたのが妖精さんということでした。ここまでならアレですが、主人公たちが結局、この妖精さんたちの変種にすぎない、というのは面白かったですね。ただそうすると、なぜP子たちのような機械知性は妖精さん(原種)を認識できず、主人公たちを人間として認識できたのかは謎ですけど。
それだけ、妖精さん(変種)の模倣力がすごかった、ということなのでしょうか。そうした中で、主人公は妖精がみえると認識していたわけですけれども、実態としては、妖精型のアイコンを操作することで、世界に干渉する謎パワーをもった存在ということなのでしょうね。
最後に、今までを総括すると、やっぱり3巻が一番面白かった。