オール・ユー・ニード・イズ・キル

桜坂洋ライトノベルをハリウッドがお金をかけて本気で映画化した本作。やはり原作のシナリオの良さを実感しました(なお、原作にはまた違った面白さがあります)。世界の命運を賭けた決戦を、何回死んでもやり直せる男が挑むという話なのですが、これがなかなかつらいのです。まず、敵のエイリアンが圧倒的に強い。動きが素早くて銃が当たらないし、なんか触手がいっぱいついてて予想つかない動きするし、しかもいっぱいいる。こんなん絶対勝てないだろ……という死線なのです。しかも主人公は戦闘経験ゼロで、戦場に従軍カメラマンとして行くのも嫌がるという一般人とたいして変わらないひ弱な男で、見るからに死にそう。またパワードスーツもCGを使わずに実機を使ったらしく、現代のテクノロジーの水準なのでスーパーヒーロー的な動きはできない、ごつごつした不格好なもので、人類側の貧弱さを演出しています。どうあがいても絶望というなかで、一手一手最善手を模索しながら詰め将棋のように勝ち筋を模索していく、中盤までのワクワク感は異常。まどかマギカのほむら視点でワルプルギスの夜撃破に近い。
以下ネタバレ。
個人的に好きなシーンはデブが着地に喜んでいるところですね。主人公はその後、飛行機の墜落にまきこまれてすぐ死ぬことを知っているので、助けようとするんですのですが、逆に自分が死んだり、ちゃんと助けるのに成功したり、助けたところで戦局は変わらないからということでそっと見殺しにしたり、このあたりハイスコアを狙うゲームプレイヤーがステージをどういった経路で進めていくか、そのありとあらゆる攻略を試してみる面白さと共通しています。
あとヒロインのリタの腕立て伏せシーン。単純に強そうな女性の美しさってのもあるし、ループからの脱出の転機になった希望に満ちたシーンなのです。これが何回も繰り返され、そして全てを解決したラストでもまた出てくる。まるで戦場に送りだされた兵士が、家族のもとに帰って子どもが出迎えてくれたような安心感があります。

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