Rewrite

――書き換えることができるだろうか。彼女の、その運命を。というキャッチコピーだったのでてっきり「Steins;Gate」みたいな話かと思いきや中二病バトルものだった。
――書き換えることができるだろうか。僕の、その錯覚を。さて、本作で対立の軸になっているのは、地球の運命を優先するか人類のエゴを優先するか、というものでちょっとテーマ的に古いかなという気がしました。「FF7」とかでもありましたよね、こういうの。ただ内容はそこそこ面白かったです。以下ネタバレ。
この世界においては超常現象は主に2種類に分類されていて、一つは物体を魔物化する能力です。生命そのものが一種のエネルギーとしてある世界観なので、人間は自分の生命を削ることによって、別の物に生命を与えて操ることができる、らしいです。もう一つは獲得形質の遺伝で、生命が獲得したスキルはなんかのデータベースに保存されていて、それを別の生命がダウンロードできる、みたいな設定のようです。
主人公には自分の身体を書き換える能力が与えられているわけですが、これは自分の身体を無自覚的に魔物化しているもので、使いすぎると人間でなくなってしまいます。よく見ると魔物化ゲージみたいなのもあって、なかなか面白いゲームシステムだなと思いました。ただこの書き換え能力はほとんど、対価なしの能力向上になってしまい、強い敵と会うたびにご都合主義的に強くなっていく主人公には少し興ざめです。ちはやシナリオでは顕著。
ただ竜騎士07のシナリオでは、主人公の書き換え能力がルチアの存在を受け入れるために使われており、よかったです。主人公の性格まで「ひぐらし」の主人公に書き換えられているような気もしましたが、個別ルートでは一番感動しました。「同情されるのではなく必要とされたい」というベタな欲望に気づき、politically correctな思考を捨て、個人としてルチアにぶつかる主人公には、まさに駆け落ちの醍醐味を感じます。世界を敵に回したダイナミック駆け落ち。
あとロミオですか。小鳥シナリオは、まあまあよかったです。ちびまる子ちゃん的な日常を演出しつつ、主人公が自分の魔物になって、ただただ自分に都合いい存在に生まれ変わってしまった可能性に怯えていたという、すごい裏表のある人物なのですが、そこがいい。会長シナリオは、人類のエゴを否定して滅びることも躊躇しないガイア主義を理解する上では不可欠でした。要はダメ人間が「はやく世界が終わればいいのに」と思っているだけなのですが、そういうダメな人ほど愛すべきという感覚はわからんでもないです。会長の終盤のすさまじいまでのヘタレっぷり・ダメ人間っぷりには若干引きましたが、下手に更生するよりは作品としてマシ。
都乃河のちはやシナリオは中二病おつであります! ぐらいの感想しかなく、静流シナリオもまあ普通。
MoonとTerraに関しては、宇宙創成のときにまでさかのぼる壮大な設定が語られて面白かったのだが、ちょっと空回り気味の壮大さでもあった。とくにMoonのバトルシーンとか、仲間全員で戦うシーンがほしかったのでとりあえず入れてみました感があって、謎。鍵のテーマソングらしきBGMは印象的でよかったです。
結局、生命そのものの運命を書き換えて、地球という惑星から他の惑星へと伝播していく可能性を見つけることが、この長い長い物語の答えなのだが、なんかもやもやとした感じが残ります。この答え自体はホーガン「星を継ぐもの」にも似た、無神経なまでのポジティブさを宣言していていいのだけど、そこに至る過程が少々迂遠すぎて、なんかどうでもよくなっちゃう。