年間SF傑作選の2013年のもの。宮部みゆきが案外がんばっているのと、円城塔が安定して奇妙な味わいを出せていることを除き、見るべきものがなかった。このほか、編者に問題があるとしか思えないんだけど、話題性重視で過去の大家の未完成原稿とか、まだ日の目を見ていない幻の作品という煽りをつけて、どこからもお声がかからずに物置で放置されていたような物件を掲載するのは本当にやめていただきたい。傑作選を名乗るからには、一定以上のクオリティを担保すべきであるし、ネタに困ったらマンガを乗せてキャッチ―さを補充すればいいのではないか。なかなか短編SFマンガを読める媒体がないので、あれはけっこういい試みだと思う。
以下、ネタバレありで解説。
宮部みゆき「さよならの儀式」 8点
ロボットのように働かされる社畜が、純粋なロボットにあこがれるという話で、地味ながらけっこう好きだなあ。
藤井太洋「コラボレーション」 6点
ジャーゴンが多くて描写が分かりづらいのですが、現実の延長としてありえそうな感じはよい。
草上仁「ウンディ」 5点
謎の生命体を奏でることで競い合うというスポ根ものにして音楽小説。さらに簡単にいうと、音楽の領域で勝負する、ポケモンバトル。
オキシタケヒコ「エコーの中でもう一度」 5点
ソナーのように音による反響によって、周囲の状況を視覚的に認知する能力の話。
藤野可織「今日の心霊」 6点
必ず心霊写真を撮ってしまう人と、そいつをアイドルのように崇拝して暖かく見守る奇特な人たちの話。語り口は面白く、ネタ自体はしょうもないものの、楽しめた一作。
小田雅久仁「食書」 5点
本を読むことでその本の世界にダイヴできるというスタンド能力の話。読書家にはたまらない一作だとは思う。
筒井康隆「科学探偵帆村」 2点
これあかんやつや……。筒井さんは多作なんだけど駄作もその分多いので、こういうのはそっとして差し上げろ。くだらなすぎて、逆に突き抜けて面白いという評価もできなくはない。
式貴士「死人妻(デッド・ワイフ)」 1点
未完の原稿が許されるのは夭折した伊藤計劃ぐらいのインパクトがある場合だけだろ……。
荒巻義雄「平賀源内無頼控」 0点
ただただ、ひどい。
石川博品「地下迷宮の帰宅部」 4点
ラノベ的な、俺様無敵設定と、剣と魔法のファンタジー要素が鼻について素直に楽しめなかった。ビターエンドで終わっているからいいやろ、という向きもあるかもしれない。
田中雄一「箱庭の巨獣」 5点
こういう気持ち悪い絵と設定のSF短編ってなかなか読めないので大変ありがたい。もっとやってほしい。
酉島伝法「電話中につき、ベス」 3点
異化されすぎてて説明不足。
宮内悠介「ムイシュキンの脳髄」 5点
脳科学を扱っているんだけど、いかんせんこの分野はイーガンが強すぎるので見劣りする。
円城塔「イグノラムス・イグノラビムス」 9点
わけわからんけど、なんか面白い。酉島さんとは異なり、最低限のリーダビリティが確保されている点も高評価。
冲方丁「神星伝」 8点
元気があって大変よろしい。
門田充宏「風牙」 5点
新人にしてはたしかに完成度が高いなとは思うものの、マインドリーディングものとしては普通の部類か。
