最果ての銀河船団 / ヴァーナー・ヴィンジ

ヴィンジは「遠き神々の炎」が大傑作だったのですっかりファンになったんだけど、その前日譚(ストーリーは全く別)にあたる本作を読んで、あれ? という感じになってしまった。話は面白いのは面白いんだけど、どこか間延びしている感じが否めなない。ストーリーはこうだ。文明がまだ発達していないクモ型宇宙人の世界で、天才科学者の力によって一気に原子力を使うレベルまで持ち上がっていく。その世界に干渉しようとしている人間側は、内部で分裂していて、そこではいかにしてクーデターを成功させるか、という駆け引きがある。
また、この世界には、人間を社畜化させるテクノロジーがあって、これを使われると、自ら進んで支配階級の命令に従ってしまう。仕事こそが究極の快楽であり、人生の目的になってしまうのだ。このあたりも、なかなか面白いんだけど、なにか、こう、はっとさせられるようなブレークスルーはなかった。たとえば、似たような他者を奴隷化するテクノロジーとしてはイーガン「宇宙消失」の脳内モッドというのがあったけど、ここには、思わずにやりとする仕掛けがあったものだ。
さて、話を戻すと、ヴィンジは「遠き神々の炎」がよかっただけの一発屋だったんじゃないか疑惑がある、ということだ。今、スペースオペラ的なものを読むんだったら、やはり小川一水「天冥の標」シリーズだなあ。