高学歴就活生が読むべき4冊

就活生のみなさんは、そろそろ謎の焦燥感に身を焦がされてくるころでしょうか。試しにESを書いてみたら自分が何者でもないことに気づいて愕然とした、なんてこともあるかと思います。それが普通です。
しかし中には「俺っち高学歴で優秀だから大手の一社や二社余裕っしょ」みたいに調子ぶっこいている御仁もおられるかと思います。今日はそのふざけた幻想をぶち壊す、じゃなくて、その幻想を幻想で終わらせないための、いくつかのアドバイスをします。大手から複数内定もらった僕がドヤ顔で語らせていただきます。

就活って要は優秀さをアピールすればいいんでしょ?

よくある誤解です。これは某外資系コンサルで働く先輩に教えてもらったのですが、ぶっちゃけ企業の人は学生の優秀さをよくわからないのです。実際に現場で働く社員の価値観からしたら、学生の考える「優秀さ」なんてものはまったく取るに足らないものです。
だから学生の基準で自分が「優秀であること」をアピールすることは、ドングリの背比べというか、目糞が「俺は鼻糞よりも強い」と言い張ることにも似た、ある種の滑稽さを伴います。


「あなた」という商品の売り手になる

では、何をアピールすればいいのでしょうか。それを考えるためには、まずは就活を「あなた」という商品を売るゲームであることを理解する必要があります。これに対して、まるで自分が消費者(商品の「買い手」)であるかのように、様々な企業を値踏みして自分の人生の最適化を図る人がいますが、これは危険です。就活は、自分という商品に新卒労働者というラベルを張り付けて売りさばくゲームなのです。
しかもその値段は大卒労働者で3億円近くもあります。 「あなた」という商品が企業にとって3億円の価値があることを、あなたという売り手は証明しなくてはいけません。*1


しかし、自分にそんな価値があることを理詰めで証明できる人はほとんどいないでしょう。大丈夫です。そういったロジックがなくても、顧客(人事)の気持ちに上手く取りいることができれば、「あなた」を売りさばくことは可能です。
そういうわけで、マーケティングの基本をこの神田昌典「あなたの会社が90日で儲かる!」で学ぶといいと思います。マーケット・オリエンテッドは大事です。


顧客がどんな商品を求めているかを理解する

ドラッカーがビジネス本として役に立つかどうかはさておき、ビジネスマンでドラッカー好きな人は多いです。彼らがどんなビジネスマンを理想としているかを知ることは、彼らの琴線に触れるためには有効です。
「マネジメント」でもいいですが個人的には「プロフェッショナルの条件」がよかったです。自分の中で「優秀な学生」になるのではなく、「顧客にとって価値のある商品」をめざしましょう。

リスクを取ってリターンを得る

いくら顧客志向を貫いたところで、結局は顧客がOKと判断してくれなくては「あなた」は評価されません。
あなたがいかに強く望もうが、そんなことはおかまいなしに容赦なく市場は選別してきます。あなたが他者(市場)でない以上、他者の判断を完全にコントロールすることはできないのです。そこには不確実性が常につきまといます。
多くの自己啓発本は、この不確実性を努力によって取り除けると豪語します。たしかに、そうやって成功する人もいるでしょう。しかし、自己啓発本は努力によって成功した人しか書かないので、努力したにもかかわらず評価されなかった多くのサンプルを無視しています。このタレブ「まぐれ」という本は、そうした自己啓発本を批判し、不確実性との付き合い方を教示するものです。


就活においても、まぐれで内定もらっただけの連中が、ドヤ顔で就活テクニックを教授してきます。そういった連中の言うことを鵜呑みにしても、確実に「あなた」を売りさばけるわけではありません。だからといって何もしなければ売れないこともたしかです。
売り手にできることは、淡々と市場の不確実性に向き合い、リスクを取っていくことだけです。何社も何社も落ちるでしょうが、それはあなたの努力が足りないのではなく、市場とはそういうものだと諦念したほうがはやいです。むしろ市場の評価をすべて自分の努力不足に帰着させて、焦ってしまうことの方が危険です。
そのうち、まぐれでリターンを得ることができるでしょうから、あきらめずにリスクを取り続けましょう。僕もそうでした。

それでも社会の歯車になりたくない人のために

商品の売り手になるのはつらいです。自分を殺して、ひたすら相手が気にいるような商品を演じ続けなくてはいけません。組織に貢献することを己の信条だと思い込み、反射的にそうしたレスポンスをしていく生活をしていると、まさに自分が社会の歯車なのだという気がしてきます。
個人主義者にとっては、まるで全体主義の悪夢にも思えるでしょう。いや、自分から率先して全体の一部へと潜り込まなくてはいけない分、全体主義よりも個人の尊厳にかける負荷は大きいかもしれません。


ただ社会の歯車にだって、そこそこいいところはあります。伊藤計劃「ハーモニー」は、ハイパー全体主義小説なのですが、なかなか救いのある全体主義なのです。詳しくはネタバレになってしまうので書けませんが、この小説は就活が抱える絶望と救済をうまく表現しています。自分を殺して組織に貢献することの、前近代的な快楽がここにはあります。
まあ、余計に就活が嫌になるかもしれませんが、その場合もある種の覚悟ができていいと思います。「え? 今おれ(組織と)調和してた? 完全に無意識だったわ―」と言えるようになりましょう。

最後に

ここまで読んで、具体的に何すればいいんだよボケ、と思う人もいるでしょう。僕が具体的にどんな営業戦略を取ったかは、ブクマで要望があれば書きます。まあ、100ブクマ越えたら書きたいと思います。ただ人の話なんて当てにならないので、まずは自分の頭で考えてみるのがいいですよ。

*1:割引率3%の場合の割引現在価値でも2億円程度の生涯賃金がある。