オススメ

人間の測りまちがい / グールド

科学と政治の根源的な癒着を暴いた名著。科学と政治の癒着と聞くと、悪徳官僚とマッドサイエンティストが「越後屋お主も悪よのう」「いえいえお代官様ほどでは」「フハハ!」「フヒヒ!」と悪巧みしている構図が目に浮かびますが全然違います。むしろ「政治…

宇宙消失 / グレッグ・イーガン

グレッグ・イーガンの長編で一番とっつきやすい。小林泰三「酔歩する男」のような量子力学的ホラーと、ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」のような近未来テクノロジーを併せ持つ傑作。 「シュレディンガーの猫」ってありますよね。「毒ガスが半々の確…

らせん / 鈴木光司

鈴木光司の中では一番面白かったです。「リング」シリーズ第2弾。瀬名秀明「パラサイト・イヴ」のようなバイオホラーな感じです。謎解きが非常に楽しい小説で、ミステリとして読んでもなかなかだと思います。人類の存亡がかかっているというスケールのデカさ…

サイエンス・イマジネーション

科学者がロボットや人工知能といったテーマについて語り、SF作家がそれにマジレスする(アンサーソングとして短編を書く)というこの企画。超絶面白い。とくに科学者たちの話がことごとく面白い。発想が大胆すぎて科学者の発言というよりもSFファンの与太話…

パンク侍、斬られて候 / 町田康

なんでこんなに面白いんだよ。こいつの書いた文章ならどんなものでもきっと面白いんだろうなと感じさせる作家が一人いて、それが筒井康隆なんだけれど、もしかしたら町田康は彼に比類しうる才能を持っているのでないか。この時代小説の皮をかぶった小説は途…

ハーモニー / 伊藤計劃

「近代」の前提をぶっ壊した超問題作。 間違いなく2008年ベストの小説。その価値観のちゃぶ台返しっぷりには脱帽する。 クラーク「幼年期の終わり」やエヴァンゲリオンの人類補完計画など、人類の進化というテーマはSFではおなじみだが、これほど大胆かつ精…

虐殺器官 / 伊藤計劃

SFの夜明けは近いぜよと坂本竜馬のごとく語ってしまいそうになった大傑作。9・11後の混沌とした世界をシミュレーションした本格社会派SFです。現代思想にハマった軍事評論家が、理論とテクノロジーの可能性をとりいれて書き上げた渾身の近未来戦争小説ってい…

青の炎 / 貴志祐介

高校生の男の子が平和な家庭をぶち壊す闖入者を殺そうとするストーリー。「デスノート」なんかと同じ、正義のために人を殺そうとする話なので、殺人がテーマなのに前向きな内容でした。主人公が殺そうとするおっさんは本当にイヤなヤツで、母親に言い寄るわ…

カオスの紡ぐ夢の中で / 金子邦彦

隠れた名著。複雑系の研究者・金子邦彦の科学エッセイ+SF。非常に刺激的な本です。とくに円城塔ファンにはたまりません。

言壺 / 神林長平

言語SFでポスト構造主義SF。言葉のルールを解体しちゃったらどうなるの? 通常の言葉とは違うルールを持つ言語は可能なの? という話。とてつもなく面白かったです。今のところ神林長平ではベストかな。

クリムゾンの迷宮 / 貴志祐介

閉鎖環境で生き残りを賭けたゼロサムゲームをする話。リアル・サバイバルゲームです。高見広春「バトル・ロワイアル」もいいですが、こっちのほうが読みやすくエンタメとして優れています。ゲーム好きの中高生あたりに人気がありそう。もちろん、いい大人が…

マウス / 村田沙耶香

村田沙耶香の青春小説。大人しくて地味な女の子と、キモがられてクラス内ヒエラルキーから取りこぼされた女の子の話。こういうのが読みたかった。森絵都が好きなんですが、もっとシビアな設定で書いてほしいなあと思っていました。「永遠の出口」はなんだか…

All You Need Is Kill / 桜坂洋

桜坂洋のライトノベル。謎のモンスター・ギタイとの終わりなき激闘……と書くと、超人的な英雄が主人公のバトルものというごくありきたりな展開を想像しますが、これは全然違います。主人公はあくまでも凡人なので、雑魚キャラのごとく死にます。しかし、なぜ…

パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ / ミチオ・カク

最も感動したポピュラーサイエンス。超ひも理論とその発展理論であるM理論、量子力学、宇宙論、平行世界、タイムマシンなどについて本職の科学者であるミチオ・カクが解説した科学書です。アイザック・アシモフやグレッグ・ベアなど、さまざまなSFを例に挙げ…

カラフル / 森絵都

死んだはずなんだけど天国で抽選に当たってしまい、もう一度下界に戻って生活しなくてはいけなくなるというストーリー。傑作すぎます。 苦境の真っ只中にある人が「死ぬほどつらい」とこぼすことがよくありますが、その人に向かって「じゃあ死ねよ」って言っ…

綺譚集 / 津原泰水

ホラーというよりも怪奇小説と呼んだほうがいいようなレトロの味わいがあります。ドブ川のような醜悪な短編が多いんですが、あたかも清流であるかのように装っているドブ川のような作品(作者の言葉を借りれば、文学的ポーズに執着した俗物根性)に特有の悪…

時間的無限大 / スティーヴン・バクスター

スティーヴン・バクスターで一番面白い。ワームホールを利用したタイムトンネルを通して未来から、未来人と宇宙人がやってくる話。と書くとなんとも幼稚なプロットに聞こえますが、とんでもない。ハードSF的な肉付けが半端じゃなく、茫漠としたスケールのデ…

告白 / 町田康

実際に起きた殺人事件「河内十人斬り」をモチーフにした大傑作。町田康は初めて読んだんですが、今までスルーしてきた自分を蹴飛ばしたくなりました。京極夏彦のような深くて思弁的な心情描写が、舞城王太郎の軽やかな文体で語られた、といった感じ。京極夏…

好き好き大好き超愛してる。 / 舞城王太郎

舞城王太郎の恋愛小説。不治の病に冒された女の子を看取る話。 「恋愛ってこういうもんだよねー」という考えをそっくりなぞるような恋愛、そんな既製品じみた恋愛を批判した恋愛小説。そしてその批判をもとにして作家の主人公が恋愛小説を書くというメタフィ…

象られた力 / 飛浩隆

国産SFの最高峰でしょう。2004年度「SFが読みたい!」国内篇第1位の、飛浩隆の短編集。テッド・チャンと並び賞されうる才能です。型破りなアイディアとそれをストレートに伝える清新な文章。作品のテーマは様々なんですが、強引に一くくりにするなら美術SFで…

ジャガーになった男 / 佐藤賢一

ここ300冊くらいで一番泣いた本です。佐藤賢一のデビュー作。日本人がスペインや新大陸を舞台に活躍するという逆「ラストサムライ」な内容です。かといって国を救う英雄譚というわけではなく、武士として生きたい一人の戦バカの泥臭くて奔放な話です。ドン・…

ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚 / 小林泰三

小林泰三の集大成ともいえるハードSF。ウルトラマンやゴジラなどの特撮モノはちびっ子に大人気の夢のあるファンタジーですが、実際にあの世界をリアルに再現したら地獄だろっていう話です。怪獣が大暴れしているその瓦礫の下には多くの人命が虫けらのように…

目を擦る女 / 小林泰三

「仮想現実」がテーマ。グロ要素もそんなになく、一番取っ付きやすいと思うので、小林泰三を読み始める人は本書がオススメです。この人はSFネタとホラーを結びつけるのが本当に上手で、人によってはトラウマになるんじゃないかっていうくらい怖いです。怖い…

九十九十九 / 舞城王太郎

とりあえず読んでください。話はそれからです。 前知識なしで読んだ方が数倍面白いです。清涼院流水のJDCシリーズをオマージュした小説ですが、元ネタを知らなくても大丈夫です。普通こういう二次創作はつまらないんですが、二次創作であることすら利用した…

夜のコント・冬のコント / 筒井康隆

筒井康隆の短編集。この頃の筒井さんが一番好きですね。ほどよく実験的でほどよくドタバタしてます。奇才っぷりがよく分かる本なのでオススメです。以下、気に入った作品を解説。

残像に口紅を / 筒井康隆

筒井康隆の最高の実験小説。世界から1文字ずつ文字が消えてゆき、その度にその文字を含む言葉・物体・概念が消えていくという空前絶後の作品です。例えば「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまいます。跡形もなく消え去ってしまうものもあ…

はるかな響き Ein leiser Tone / 飛浩隆

さてこの短編、音楽小説であり意識SFであり、クラーク「2001年宇宙の旅」のパロディです。面白い。やっぱりこの人はスゴイですよ。以下ネタバレ。

BRAIN VALLEY / 瀬名秀明

オカルトと宗教と脳科学をごちゃ混ぜにして驚くべき結論に持っていく小説。この人の作品では一番好きです。脳科学の考察に常軌を逸した情熱が込められていて、図解まで出てきた時は思わず吹きました。ポピュラーサイエンスがフィクションの服を着て歩いてる…

アルジャーノンに花束を / ダニエル・キイス

知的障害者チャーリィに投薬で頭を良くしてあげる話。全てチャーリィの日記という形式なので、最初の方はひらがなだらけ誤字だらけのひどい文章です。ところがどんどん頭が良くなるにつれ、急速に文章もまともになっていきます。そしていつかこいつ自分より…

あなたの人生の物語 / テッド・チャン

珠玉の短編集という言葉がこれほど似合う本はほかに無いでしょう。テッド・チャンを語らずして現代SFは語れない――――グレッグ・イーガンと同じくらいに高評価されている作家です。私個人としましても、その評価に異存はありません。むしろ小説の出来自体はア…