ジャガーになった男 / 佐藤賢一

ここ300冊くらいで一番泣いた本です。佐藤賢一のデビュー作。日本人がスペインや新大陸を舞台に活躍するという逆「ラストサムライ」な内容です。かといって国を救う英雄譚というわけではなく、武士として生きたい一人の戦バカの泥臭くて奔放な話です。ドン・キホーテの日本人版と言えるでしょう。正直びっくりするぐらい面白かったです。



ドラマは古典的なんですが、舞台が最高でした。17世紀、徳川が天下が取り、武士の居場所が今にもなくなりつつある日本。戦を求めて欧州にやってきたものの周りに流されて、どうしようもない窮地に陥る主人公。こいつは夢を追うことを諦めきれずに最後までバカをやり続けるんですが、それも愚直でよかったです。恋愛要素も女を泣かすダメな男というありがちな感じではあるんですが、そういったドラマのシンプルさをディティールの凝った舞台がカバーしています。
多分同じことを現代の日本でやっても白けるだけだったでしょうが、こういう時代ならアリだよなあ、と素直に感動できました。自分でもなんでこんなに泣いたのかさっぱりわかりませんが、分析できる冷静さを持ってたらそもそも泣けないので、まあ謎ってことで。こんな涙脆くなかったんだけどなあ。
あと有名な史実がストーリーの随所に出てくるので世界史好きにはたまらないと思います。