BRAIN VALLEY / 瀬名秀明

オカルトと宗教と脳科学をごちゃ混ぜにして驚くべき結論に持っていく小説。この人の作品では一番好きです。脳科学の考察に常軌を逸した情熱が込められていて、図解まで出てきた時は思わず吹きました。ポピュラーサイエンスがフィクションの服を着て歩いてる、そんな感じです。



この人は「その発想はなかった」と思わせるような奇抜さはないですが、ある現象をとことん究明していった先にある尋常じゃない何かを描くことに長けています。宇宙論量子力学のような世界認識を覆すような科学ではなく、生物学や化学などの、世界をどこまでも細かく解明しようとする科学なんです。前者の方が派手で、後者の方が地味なんですが、その小説として取っ付きにくい領域を掘り下げていくところはやっぱり研究者っぽいですね。