SF

ラギッド・ガール 廃園の天使II / 飛浩隆

読み終わるのがもったいないほど素晴らしかった。もしこの本を読んでる瞬間を永遠に引き伸ばすことができるとしたら「ハイよろこんで!」と即答してしまいかねない。それほどの傑作。飛浩隆が持つ、生と死への感性は常軌を逸しているなあ。仮想現実や人工生…

グラン・ヴァカンス 廃園の天使I / 飛浩隆

SF

飛浩隆がおくる、エログロスプラッタファンタジー。仮想世界のリゾートで繰り広げられるRPG的マジカル不思議バトルからは目が離せない! けど結末は賛否両論あるんだろうなあ、って感じか。文章は相変わらず丁寧につくりあげた飴細工のような美しさと、相当…

にぎやかな未来 / 筒井康隆

SF

筒井康隆断筆問題の発端となった「無人警察」を収録した初期のショートショート集。断筆問題については後でいろいろと語ることになるので、ここでこの「無人警察」のあらすじを紹介しておきます。

宇宙衛生博覧会 / 筒井康隆

SF

グロテスクな小説っていうのは世の中にはたくさんあるけどこれほどトラウマになった本はない。小林泰三もホラーでその腕前を発揮しているが、発想の奇抜さ・鮮やかなイメージを心象に結ぶ力に関してはこの作品に一歩及ばないのではないか。というか筒井康隆…

真空ダイヤグラム / スティーヴン・バクスター

SF

やたらとスケールのでかい宇宙史、ここに完結。暗くてしっとりとしたストーリーなのに、科学的なディティールがむやみにごつごつしていて、ああ、バクスターだなといった印象を受けます。ジーリー・クロニクルの大まかな流れはこの一冊で分かるのでとりあえ…

プランク・ゼロ / スティーヴン・バクスター

SF

ハードSF連作短編集。スケールが壮大だってことはわかるんだけど、壮大すぎて理解できないのがバクスターの欠点といえば欠点。なんですが、この短編集の前半はわりと無難にまとめてあって、こういうのも書けるのかと驚きました。もちろん、後半はバクスター…

宇宙消失 / グレッグ・イーガン

グレッグ・イーガンの長編で一番とっつきやすい。小林泰三「酔歩する男」のような量子力学的ホラーと、ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」のような近未来テクノロジーを併せ持つ傑作。 「シュレディンガーの猫」ってありますよね。「毒ガスが半々の確…

ループ / 鈴木光司

SF

鈴木光司の「リング」シリーズ第3弾。前二作に残した謎をほぼ解明した完結篇。これは人によってかなり評価が分かれると思います。でもかなり好みでした。 以下ネタバレ。

らせん / 鈴木光司

鈴木光司の中では一番面白かったです。「リング」シリーズ第2弾。瀬名秀明「パラサイト・イヴ」のようなバイオホラーな感じです。謎解きが非常に楽しい小説で、ミステリとして読んでもなかなかだと思います。人類の存亡がかかっているというスケールのデカさ…

サイエンス・イマジネーション

科学者がロボットや人工知能といったテーマについて語り、SF作家がそれにマジレスする(アンサーソングとして短編を書く)というこの企画。超絶面白い。とくに科学者たちの話がことごとく面白い。発想が大胆すぎて科学者の発言というよりもSFファンの与太話…

火星年代記 / レイ・ブラッドベリ

SF

絶望した! オールタイムベストに絶望した! やたら評価の高い古典には気をつけたほうがいいとつくづく思っているんですが、ブラッドベリ、お前もか……。火星にいったら運河はあるわ、テレパシー使える火星人はいるわで萎えます。いや、まあ、そこは古い作品…

忌憶 / 小林泰三

SF

「博士の愛した数式」……だと……? なにキレイにまとめようとしてんだ! おれが本当の前向性健忘症を見せてやる! という感じの小林泰三のホラーです。前向性健忘症の主人公が語り手のミステリとしても読めます。ごく自然に叙述トリックがあり、オチも元ネタの…

七瀬ふたたび / 筒井康隆

SF

ドラマ化記念ということで。まあドラマは第一回だけ見て、主人公役がどうにもとっぽい感じがして見る気なくしてしまったんですが。なんかもっとこう、知性というか孤高のオーラというか、そういうのがほしかったです。 それはさておき、筒井康隆の作品の中で…

ハーモニー / 伊藤計劃

「近代」の前提をぶっ壊した超問題作。 間違いなく2008年ベストの小説。その価値観のちゃぶ台返しっぷりには脱帽する。 クラーク「幼年期の終わり」やエヴァンゲリオンの人類補完計画など、人類の進化というテーマはSFではおなじみだが、これほど大胆かつ精…

虐殺器官 / 伊藤計劃

SFの夜明けは近いぜよと坂本竜馬のごとく語ってしまいそうになった大傑作。9・11後の混沌とした世界をシミュレーションした本格社会派SFです。現代思想にハマった軍事評論家が、理論とテクノロジーの可能性をとりいれて書き上げた渾身の近未来戦争小説ってい…

カオスの紡ぐ夢の中で / 金子邦彦

隠れた名著。複雑系の研究者・金子邦彦の科学エッセイ+SF。非常に刺激的な本です。とくに円城塔ファンにはたまりません。

言壺 / 神林長平

言語SFでポスト構造主義SF。言葉のルールを解体しちゃったらどうなるの? 通常の言葉とは違うルールを持つ言語は可能なの? という話。とてつもなく面白かったです。今のところ神林長平ではベストかな。

逆転世界 / クリストファー・プリースト

SF

常に移動を続ける都市で生まれた主人公が世界の謎に翻弄されたり適応したりする話。変わった世界構造を楽しむという点では小林泰三「海を見る人」なんかと同じです。剥き出しのセンス・オブ・ワンダーがあります。前半がやや退屈でしたが、その狭くて窮屈な…

脱走と追跡のサンバ / 筒井康隆

SF

SFとしてなかなか評価も高いんですがイマイチぴんときませんでした。情報・時間・空間を越えた冒険をスラップスティックに描いた話。当時として先鋭的だったのかもしれない薀蓄も今となってはちょっと小難しい衒学にしか思えず、エンタメとして素直に楽しめ…

カムナビ / 梅原克文

SF

前代未聞の土偶を発見した考古学者が大きな事件に巻き込まれて古代と宇宙の謎を解き明かしたりするストーリー。小松左京っぽいです。面白いんだけど前二作と比べるとちょっと落ちるかなあ。話のテンションが低いせいか気の抜けた人物描写が鼻につきます。峰…

ターミナル・エクスペリメント / ロバート・J・ソウヤー

SF

ロバート・J・ソウヤーのSFミステリ。医学博士のホブスンは、死にかけた老女の脳波の測定中に、人間の「魂」とおぼしき小さな電気フィールドが脳から抜け出てゆくのを発見した。魂の正体を探りたいホブスンは自分の脳をスキャンし、自らの精神の複製を三通り…

蹴りたい田中 / 田中啓文

SF

田中啓文のギャグ小説。タイトル通りのふざけた作品。駄洒落のオンパレードです。くっだらねー本紹介しやがって、と人を怒らせるような内容でしたが、たまにはこういうのもいいじゃないですか。あとSF業界の内輪ネタがけっこうあります。製薬会社の社長の名…

フレームシフト / ロバート・J・ソウヤー

SF

ヒトゲノム・センターに勤務する気鋭の遺伝子学者ピエールは、帰宅途中、ネオナチの暴漢にあやうく殺されそうになった。ネオナチとなんの関わりもないのに、どうして狙われたのか? やがて、自分が連続殺人事件にまきこまれていると知ったピエールは、事件の…

ホンキイ・トンク / 筒井康隆

SF

筒井康隆の初期短編集。「ワイド仇討」がよかったですね。あんまり乗り気じゃないのに仇討ちせざるを得なくなった主人公のもとに、次々と似たような境遇の人たちが集まってきて一大イベントになっていく過程が面白い。この仇討ちショーを喜ぶ構図って、犯罪…

どこかの事件 / 星新一

SF

星新一のショートショート集。この中では「味覚」が面白かったです。ある日特殊な能力に目覚める男の話なんですが、その能力が変わっています。ありとあらゆるものが旨そうに見え、実際に食べてみると途轍もなく旨く感じるという能力なんです。 以下ネタバレ…

All You Need Is Kill / 桜坂洋

桜坂洋のライトノベル。謎のモンスター・ギタイとの終わりなき激闘……と書くと、超人的な英雄が主人公のバトルものというごくありきたりな展開を想像しますが、これは全然違います。主人公はあくまでも凡人なので、雑魚キャラのごとく死にます。しかし、なぜ…

フラッシュフォワード / ロバート・J・ソウヤー

SF

全世界の人々が自分の未来をかいま見たら、なにが起こるのか。ヨーロッパ素粒子研究所の実験のせいで、数十億の人々の意識が数分間だけ21年後の未来に飛んでしまう。人々は、自分が見た未来をもとに行動を起こすが、はたして未来は変更可能なのか……というス…

宝石泥棒 / 山田正紀

SF

悪夢のような動植物がはびこるファンタジックな世界で、戦士と呪術師と“狂人”がパーティーを組んで冒険するというストーリー。筒井康隆「旅のラゴス」よりもSF寄りです。まず思ったのはこれはそのまんまRPGのシナリオに流用できるなあ、ということ。冒険が進…

時間的無限大 / スティーヴン・バクスター

スティーヴン・バクスターで一番面白い。ワームホールを利用したタイムトンネルを通して未来から、未来人と宇宙人がやってくる話。と書くとなんとも幼稚なプロットに聞こえますが、とんでもない。ハードSF的な肉付けが半端じゃなく、茫漠としたスケールのデ…

あなたの魂に安らぎあれ / 神林長平

SF

核戦争後の放射能汚染は、火星の人間たちを地下の空洞都市へ閉じ込め、アンドロイドに地上で自由を謳歌する権利を与えた。有機アンドロイド――人間に奉仕するために創られたそれは、人間のテクノロジーをひきつぎ、いまや遥かにすぐれた機能をもつ都市を創り…