グラン・ヴァカンス 廃園の天使I / 飛浩隆


飛浩隆がおくる、エログロスプラッタファンタジー。仮想世界のリゾートで繰り広げられるRPG的マジカル不思議バトルからは目が離せない! けど結末は賛否両論あるんだろうなあ、って感じか。文章は相変わらず丁寧につくりあげた飴細工のような美しさと、相当手が込んであるんだろうなあという贅沢さが感じられます。同じエログロスプラッタな作品、小林泰三「AΩ」と比べると、この繊細な文体は飛浩隆ならではでしょう。

ストーリーも前半は熱くなれます。手持ちの武器を工夫していろいろな戦術を繰り出すというのは純粋に楽しい。FFTタクティクスオウガが好きな人ならこの戦闘シーンだけでお腹いっぱいになれます。
一方、後半の展開には疑問が残ります。三部作の第一作目ということで伏線をたくさん張っておこうということなんでしょうか、謎が多すぎてちょっと消化不良気味。それを補うためか、主人公の周りではある程度ドラマは完結しますが、物足りなくて肩透かしを食らった気分です。
こうしてみると、私は飛浩隆のSF成分は好きだけど、それ以外の要素(文体・ストーリーなど)はとくに好きというわけじゃないのかもしれません。