陰摩羅鬼の瑕 / 京極夏彦

京極堂シリーズ第7作目。嫁いだ花嫁が次々と死んでいく洋館。いかにもって感じのシチュエーション。今回のテーマは「儒教」です。それもハイデガーの哲学と融合した儒教なので、面白かったです。しかしこれはもう教養小説ですね。あるいは文系ハードSFとも。知識のひけらかしともとれますが、情報量の多い小説は好きなので大満足。毎度毎度、京極堂の薀蓄が楽しみで仕方ありません。林羅山のエピソードが特に好きですね。歴史上の人物はその表層しか知らずに、あいつはダメだこいつはスゴイなどと評してしまいがちで、詳しく研究すると色々それがひっくり返るものです。林羅山好きになりましたよ。トリックの部分は関口でさえ気づくほど、お粗末なものでしたが、真相のあっけなさも京極堂シリーズの特徴でしょう。ありもしない幻を見てしまう群盲たちの主観と、それを合理主義の下で解体する憑物落としこそ、肝なのですから。