にぎやかな未来 / 筒井康隆


筒井康隆断筆問題の発端となった「無人警察」を収録した初期のショートショート集。断筆問題については後でいろいろと語ることになるので、ここでこの「無人警察」のあらすじを紹介しておきます。
まず舞台は近未来で、非行や犯罪を監視するテクノロジーが過剰に発達した社会です。そのテクノロジーの集大成がロボット巡査というもので、こいつは街でスピード違反や飲酒運転などの交通違反をしている人を見つけたらそいつにずっとつきまとうという優れものです。主人公はこのロボット巡査に目をつけられてしまいます。

おかしいな。何もおれは悪いことしていないのに。あと、てんかん持ちの人が異常な脳波を出していた場合もチェックされるらしいが、おれはてんかん持ちでないしなあ。

結局、主人公は警察署に文句を言いにいきます。そこでなんとこのロボット巡査が人の無意識まで読み取って犯罪に走る心理をチェックすると聞きます。
いくら犯罪防止とはいえプライバシーの侵害じゃないか! それに第一まだ罪を犯していない人間を取り締まるなんて横暴だ! しかもロボットごときが人間をチェックするなんておかしい!
そう反論する主人公ですが、担当の警察官に「ロボットを批判するのをやめろ!」と逆ギレされます。あわや殴られる寸前となって、急にその警察官の力が抜けて崩れ落ちます。彼もまたロボットだったのです。

隣室から、リモート・コントローラーを持った、ひとりの刑事があらわれた。
「やあ、ハハハ、失礼しました。新しく作られた取調官ロボットを実験してみたんですよ。どうです、よくできてるでしょう?」
わたしは笑えなかった。この刑事もどことなく、ロボットくさかったからである。

一読者からすると、なぜこの作品が問題になるのかわからないほど毒の薄い作品でした。ブラックユーモアのひどさならもっと上級なのがいるのに。