真空ダイヤグラム / スティーヴン・バクスター

やたらとスケールのでかい宇宙史、ここに完結。暗くてしっとりとしたストーリーなのに、科学的なディティールがむやみにごつごつしていて、ああ、バクスターだなといった印象を受けます。ジーリー・クロニクルの大まかな流れはこの一冊で分かるのでとりあえずバクスターを堪能したいという人はオススメ。ラストの爽快感とがっかり感もずば抜けてます。
宇宙レベルの壮大な大風呂敷が広げられる点ではグレッグ・イーガン「ディアスポラ」なんかと同じです。形式も連作短編集と一緒なので、ついつい比較したくなりますね。ただイーガンが広大な外宇宙へと話が向かいつつも、やっぱり最終的には「自己とは……」「アイデンティティとは……」といった内宇宙に話が収束するのとは対照的に、バクスターの場合はひたすら遠大なプロジェクトの話につきっきりとなります。矛先が無限の外宇宙へと向かって発散したっきり帰ってこないんです。そこが豪壮でいいんですが、スケールだけでかくなっただけという気もする。テクノロジーがいくら進歩しようが人間は人間のままだということなのかもしれませんが、なんとなくちぐはぐな印象を受けてしまいます。