2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧
小林泰三のホラー。吸血鬼最強と怖れられたヨブ。娘と妻の復讐のため、吸血鬼を退治する組織「コンソーシアム」に入った人間・ランドルフ。吸血鬼を食べ、己の肉体に吸血鬼の臓器を収め、さらに強力なものへ変身する、追跡者・J―――という設定だけみても中二…
小林泰三の集大成ともいえるハードSF。ウルトラマンやゴジラなどの特撮モノはちびっ子に大人気の夢のあるファンタジーですが、実際にあの世界をリアルに再現したら地獄だろっていう話です。怪獣が大暴れしているその瓦礫の下には多くの人命が虫けらのように…
要するに予め明日は決定しているのか、という話です。存在するかどうかは分からない、というのが結論ですが、小林泰三「脳髄工場」「予め決定されている明日」(「目を擦る女」収録) 、ロバート・J・ソウヤー「フラッシュフォワード」などの作品を読むと運…
「仮想現実」がテーマ。グロ要素もそんなになく、一番取っ付きやすいと思うので、小林泰三を読み始める人は本書がオススメです。この人はSFネタとホラーを結びつけるのが本当に上手で、人によってはトラウマになるんじゃないかっていうくらい怖いです。怖い…
ホラー・SFに関しては他の追随を許さない凄みがある小林泰三のミステリ短編集。とりあえず編集にミステリに挑戦してみないかと言われて見よう見まねで書いてみましたーって感じの短編が最初の3つ続き、ちょっと残念でした。が、後半はこの作者の独特の面白さ…
表題作は、家庭教師が国語の入試におけるコツを教えるという話。実用的な必勝法では無いんですが、ある意味国語の入試問題自体が実用的とはほど遠いものなので、こういうのもアリでしょう。小説における解釈なんて多種多様であるべきなのに、それをひとつの…
恒川光太郎の中篇小説集。ホラーというよりも幻想小説です。恐怖よりもほんわかした懐かしさを感じました。表題作は、何でも買うことのできるという市場が舞台の話。その発想はなかった、そういうこともできるのか、というような驚きがありました。テンショ…
そのまんま漫画化できそうなラブコメの王道っていう感じで、漫画チックなキャラに耐え切ることが出来るかどうかが勝負の分かれ目でしょう。こういうのが嫌いな人は、読んでも驚きと感動が一切無いであろう確信があります。けどそういうニーズを持つ中高生あ…
筒井康隆が6年もの歳月をかけて綴った大作。しかし読んだのが中学生の時だったせいか、そんなに面白くなかったです。消化不良を起こしているだけかもしれません。親にお前が読むのはまだ早いと言われてムキになった結果がこれだよ! 力作であることは疑いよ…
宮部みゆきの連作短編集。親不在の状況におかれた中学生の双子の男の子たちが、泥棒のおじさんを捕まえ、父親代わりにしたてるという物語。主人公は継父(ステップファザー)へのステップを一歩一歩踏みしめるうちに、情にほだされ家族愛に目覚めるというわ…
ゲームの原作者自身によるノベライズです。謎の洋館の中で惨劇が起こるというホラー。会話が多すぎてちょっと萎えますが、エンタメとしてはぼちぼち。ゲームの方はやったことありませんが、これを読んでもプレイする気にはなれませんでした。
村上龍の自伝的青春小説。全共闘やビートルズの時代である1969年の佐世保で17歳の主人公が世界に反抗する物語。村上龍の作品の中で唯一笑いを取りにいっている娯楽作です。フォントも工夫してあり笑えました。それだけでなく非常に楽しい小説です。楽しく生…
絲山秋子の中編。躁病の主人公と軽い鬱病の相方の精神病院脱走劇。重そうな設定ですが、割りとのん気なロードノベルでした。安っぽいお涙頂戴ものじゃないのはよかったです。けど、淡々としすぎていてちょっと物足りない。嫌いではないですが好きでもないで…
とりあえず読んでください。話はそれからです。 前知識なしで読んだ方が数倍面白いです。清涼院流水のJDCシリーズをオマージュした小説ですが、元ネタを知らなくても大丈夫です。普通こういう二次創作はつまらないんですが、二次創作であることすら利用した…
超能力者の兄弟が施設から脱出し、大きな事件に巻き込まれていくというストーリー。わかります。中二病だと言いたいんでしょう。全くその通りの小説なんですが、純真な子どものころに読んだせいか面白かったです。たぶん今読んでもつまんない。酢だこさん太…
第一回小松左京賞受賞の平谷美樹のSF。信仰を失った人類が新たなる神を求めて地球外知的生命体を探していたら、本当にファーストコンタクトをしてしまった、というストーリー。神の証明を求める神父が物語上大きな役割を持っており、キリスト教と科学の統合…
「ダ・ヴィンチ・コード」の前に書かれた作品。主人公は同じロバート・ラングドン。すでに消滅したはずの科学者結社イルミナティがヴァチカンにテロを仕掛けるというストーリー。核爆弾よりも危険な反物質で国を吹っ飛ばすと脅迫したり、コンクラーベに参加…
SFというよりは実験的な短編がほとんどです。文学がいかにフリーダムか教えてくれます。
筒井康隆の短編集。この頃の筒井さんが一番好きですね。ほどよく実験的でほどよくドタバタしてます。奇才っぷりがよく分かる本なのでオススメです。以下、気に入った作品を解説。
筒井康隆のメタフィクションの極北ともいえる作品。朝日新聞の朝刊に連載されたことを利用し、読者からの投書やメールを取り入れて作品を展開するという前代未聞の実験作です。現実と相互作用している時点でメタな構造を持ったフィクションですが、小説の内…
筒井康隆の最高の実験小説。世界から1文字ずつ文字が消えてゆき、その度にその文字を含む言葉・物体・概念が消えていくという空前絶後の作品です。例えば「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまいます。跡形もなく消え去ってしまうものもあ…
超難解。無限と有限と論理と情報というキーワードをこねくり回して、ただただ難解な円城塔ワールドをぶち立ててます。しかも性質の悪いことに、まだるっこしい表現で悪名高い公文書のパロディでもあるので、難読でもあるのです。分からせるつもりがこれっぽ…
さてこの短編、音楽小説であり意識SFであり、クラーク「2001年宇宙の旅」のパロディです。面白い。やっぱりこの人はスゴイですよ。以下ネタバレ。
田口ランディはまだ全作を網羅してないので断言できませんが、「コンセント」と「アンテナ」が奇跡の作品だった一発屋ならぬ二発屋なのかなあという印象です。そんな田口ランディの短編集。カルト教団、自殺、ゴミ屋敷、中絶といかにも現代的で話題になりそ…
オカルトと宗教と脳科学をごちゃ混ぜにして驚くべき結論に持っていく小説。この人の作品では一番好きです。脳科学の考察に常軌を逸した情熱が込められていて、図解まで出てきた時は思わず吹きました。ポピュラーサイエンスがフィクションの服を着て歩いてる…
高度6000km、秒速5600kmの人工衛星の内部で築き上げられた猫の社会が舞台の話。反吐が出そうな表紙ですが、SFとして評判がよかったので読んでみました。センス・オブ・ワンダーはほぼ無いですが、ニーヴン&パーネル「神の目の小さな塵」のようなSFマインド…
平凡な中年サラリーマンが平凡な日常を取り戻すために、身体を鍛えてがんばるという内容。いい年こいたおっさんが年甲斐もなくはりきる姿は微笑ましい。映画化もされましたが、この原作も映画のようにさくっと楽しめる作りになっています。気分転換のために…
知的障害者チャーリィに投薬で頭を良くしてあげる話。全てチャーリィの日記という形式なので、最初の方はひらがなだらけ誤字だらけのひどい文章です。ところがどんどん頭が良くなるにつれ、急速に文章もまともになっていきます。そしていつかこいつ自分より…
珠玉の短編集という言葉がこれほど似合う本はほかに無いでしょう。テッド・チャンを語らずして現代SFは語れない――――グレッグ・イーガンと同じくらいに高評価されている作家です。私個人としましても、その評価に異存はありません。むしろ小説の出来自体はア…