一般小説

巷説百物語 / 京極夏彦

今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉 / 京極夏彦

これ本当に楽しいんですよ。毎回ストーリー展開は一緒なんですが、落ちが見えていても面白い。ともすればマンネリ感を与えがちな構成も、京極夏彦の手にかかればこうも居心地のよい小説世界になるのですね。ぜひともまた多々良先生を使った短編を書いていた…

百器徒然袋 風 / 京極夏彦

百器徒然袋 雨 / 京極夏彦

百鬼夜行 陰 / 京極夏彦

妖怪というのは狂気から生まれる妄念である。というのが京極夏彦の考え方のようだ。僕も賛成である。知り合いに統合失調症の人で、無数の赤ちゃんが足下から身体をよじ上ってくるという幻覚に苦しんでいる人がいるが、これなど時代が時代ならば「妖怪に憑か…

イン ザ・ミソスープ / 村上龍

ロケットボーイズ / ホーマー・ヒッカム・ジュニア

スプートニクの恋人 / 村上春樹

スプートニクが出てくる必要ないんじゃないかっていうぐらい作品が読めなかったです。難読ではないんですが難解です。エイリアンの生態系を観察してるような不可解さがあります。しかもこういった作品が世界的に売れているという事実が恐ろしい。下手なホラ…

文学部唯野教授 / 筒井康隆

人生でもっとも多く読み返した小説ベスト10に入る。文学部の教授である主人公が大学内の権力闘争に巻き込まれながら、文学の何たるかをを模索するというストーリー。半分が教授による文芸批評の講義なんですがかなりためになります。さくっと教養を身につけ…

王妃の離婚 / 佐藤賢一

さすが佐藤賢一。安定して面白い。ストーリー自体はわりとベタなのに、フランス中世の法廷ものという設定がすさまじくよい。フランス王に離婚を請求された王妃を弁護する、なんて設定で小説を書こうなんて普通は思わないし、ましてやそれが面白く仕上がるな…

カラマーゾフの兄弟 5 / ドストエフスキー

一言でいえば冗長な凡作だったかな。文学スノッブとしては「やっぱりドストエフスキーさんすげーや!」と心の底から叫べるような作品を期待していたんですが全然感動できませんでした。……という投げやりな感想だけだとさびしいのでメリットについても言及し…

カラマーゾフの兄弟 4 / ドストエフスキー

さあやっとクライマックスだ! と思ったら唐突にどうでもいいエピソードがでてきてしかもそれに100ページ以上割かれるという、予想だにしない展開が待っていました。これがロシア文学クオリティ。

カラマーゾフの兄弟 3 / ドストエフスキー

正直だれてきた……。引き続き、小説界のラスボス「カラマーゾフ」を読んでいます。そろそろ何らかの事件がおきてもおかしくないかな、と思っていたら巻頭の目次で壮絶なネタばれ。お前……これがミステリだったら読者きれるぞ……。いや、逆に考えて「怪しすぎる…

カラマーゾフの兄弟 2 / ドストエフスキー

人生の意味、神は存在するのか、キリスト教徒のあるべき姿といった話題が増え、京極夏彦「鉄鼠の檻」ロシア正教版みたいな感じになってきました。とくに長男なんかは関口に毛の生えた程度の明晰さしか持ち合わせていないくせに、その口上の長さときたら京極…

カラマーゾフの兄弟 1 / ドストエフスキー

文学の代名詞ともいえる古典中の古典、ドストエフスキーに挑戦してみました。まあ、アレですよ。なかば冷やかし半分で読んでます。なんか文学の話になるとやたらに古典を勧めてくる人がいますが、古典古典うるせーよ! っていう気持ちになりませんか? でも…

夜は短し歩けよ乙女 / 森見登美彦

筒井康隆じゃねーかこれ(ほめ言葉)。 好みの文体だったしギャグも面白かったんですが、なにかしら不満だったのはストレスがたまるストーリーだったからかもしれません。非モテの男ががんばって女の子につきまとうという話なんですが、まどこっしすぎた。ま…

2days 4girls / 村上龍

村上龍の鬱系エロ小説。心が壊れて捨てられた女たちを預かり、立て直すことが仕事の主人公。そんな男が夢とも幻想ともわからない謎空間をさまよいながら、うだうだと暗い話をするというストーリーです。はっきり言って面白くなかったし、これを面白いと思え…

THE MASK CLUB / 村上龍

村上龍の鬱系SM小説。死者が語り手という村上春樹的なよくわからないファンタジー要素があります。ただでさえこういう描写系の作品は苦手なのに、その上よくわからない設定までついてくるんですからたまりません。途中で打ち切りたい気持ちでいっぱいだった…

バースデイ / 鈴木光司

鈴木光司の「リング」シリーズ外伝。前三作で残した微妙な伏線を回収する短編集。よっぽどこのシリーズが好きな人じゃないと読む価値はありません。私はそれなりに楽しめたんですが、それでもなんとなく騙されたような気分です。そもそもストーリー的な謎は…

リング / 鈴木光司

鈴木光司の代表作。ジャパニーズホラーの原点ともいうべきベストセラーです。映像化もされた作品で、貞子が井戸や画面から這い出てく るシーンはけっこう有名でしょう。「そのビデオを見ると、一週間後に死ぬ」という呪いのビデオを見てしまった妻子を救うた…

くっすん大黒 / 町田康

町田康のデビュー作。ストーリーを説明すると、これはひどい、と言わざるを得ないようなしょうもないもので、要はニートの腐れきった日常を描写しただけ。事件らしい事件もとくに起きず、劇的な展開は一切ないという有様で、どこが面白いと聞かれても答える…

宇宙のみなしご / 森絵都

森絵都の作品は子供向けと見せかけておいて大人が読んでも十分面白いと思える作品が多いんですが、さすがにこれは児童文学の域を出なかったか。子供だましというわけではないんですが、感傷的な感性というか、とりあえず大人に反抗しておきたい幼稚さという…

歌と饒舌の戦記 / 筒井康隆

北海道にソ連軍が侵攻してきて、やたらと饒舌な変人たちがゲリラを組織して対抗するというストーリー。町田康「パンク侍、斬られて候」みたいな感じです。筒井康隆って短距離選手みたいなところがあって瞬発力はすごいんだけど持久力がないというか長丁場に…

亜玖夢博士の経済入門 / 橘玲

経済学と現実の経済の橋渡しというものは必要だが、ほとんどの人にとっては経済学なんてセロハンテープの次くらいにどうでもいいマイナーな存在だ。だからこそ、こういう経済学とエンタメ小説の橋渡しをするような中間小説は貴重だと思う。いや、ホント笑え…

バラバラの名前 / 清水義範

短編集ですが「モットー選定会議」がかなり面白い。この作者で一番面白いかも。会社のモットーを決める会議をギャグタッチで描いた作品です。モットーというのはその会社なり個人を一言で象徴するものですから大切です。しかし世の中にはけっこう変なモット…

名前がいっぱい / 清水義範

名前をテーマにした清水義範の短編集。「人は死して」が面白かったです。親の戒名を寺に頼まず自分でつけようとした男の話。戒名って実は自分でつけられるんですが、日本ではそれをわざわざお寺のお坊さんに頼んでつけてもらう文化があります。しかも戒名に…

博士の愛した数式 / 小川洋子

記憶が80分しかもたない数学者の世話をすることになった家政婦と子どもの心温まるストーリー。読後の後味もすっきりしていて、読んだ時はたいそう感動したんですが、どうにも心に残らない小説です。短期記憶が80分しか持たないという設定は、人間関係を構築…

パンク侍、斬られて候 / 町田康

なんでこんなに面白いんだよ。こいつの書いた文章ならどんなものでもきっと面白いんだろうなと感じさせる作家が一人いて、それが筒井康隆なんだけれど、もしかしたら町田康は彼に比類しうる才能を持っているのでないか。この時代小説の皮をかぶった小説は途…

先生 / 吉村達也

生徒にバカにされた先生がその鬱憤を爆発させて凶行におよぶ、というストーリーです。初めてこの人の作品を読むなら、まずまず面白いと感じるかもしれません。が、実はモチーフが違うだけでほとんど他の作品と変わりません。やっつけなレビューで申し訳ない…

はじめての夜 二度目の夜 最後の夜 / 村上龍

村上龍の恋愛小説。「69」の続編で、村上龍を模した主人公が初恋の女性と23年ぶりに再会してディナーするというストーリー。昔好きだった人がふくよかなおばさんになっていたり、いいおっさんになっていたりするのは幻滅ですが、よくよく考えると自分だって…