名前がいっぱい / 清水義範

名前をテーマにした清水義範の短編集。「人は死して」が面白かったです。親の戒名を寺に頼まず自分でつけようとした男の話。戒名って実は自分でつけられるんですが、日本ではそれをわざわざお寺のお坊さんに頼んでつけてもらう文化があります。しかも戒名にはランクまであるらしく、この文字を使うなら相場はこれぐらいなんていう俗っぽい風習すらあります。俗世を出家して仏になるための名前がきわめて世俗的に決定されているというのは、笑えますね。まあ坊主丸儲けを批判したいのではありません。むしろ、坊主も仕事ですからいろいろ収入源を確保しないといけないんだろうなあ、と商売根性に感心しました

本作ではこういった戒名にまつわる色んなエピソードをエッセイ風に紹介しています。それをふまえて、理想の戒名とはどんなものかと試行錯誤します。オチも笑えました。誰か真似してやってないかな。
清水義範はこういう小説とエッセイを足して2で割ったような下らない短編が向いています。ジャンキーに楽しめるので、小説苦手な人でも全然余裕でいけるってのが売り。