天獄と地国 / 小林泰三

引力が逆さまの世界。気を抜くと足元の宇宙に放り投げだされる過酷な世界で、人々は天井の地面にぶら下がって生きていた。いや、天井という言葉はこの世界には無いかもしれない。だって天というのは下に広がる水も空気もない漆黒の宇宙を指す言葉なのだから。「天獄」に落ちる恐怖が支配する世界で、主人公は、この世界はおかしいと考え、「地国」と呼ばれるユートピアを目指す。そこは地面方向に引力が働き、二本の足で普通に立てる世界だ。僕たちからすればきわめて日常的な世界が、この小説では最終目標になっている。設定だけでも十分面白いが、ストーリーの大半はエヴァエヴァしい巨大ロボ戦になっている。え……。
しかも主人公たちは全員PhD持ちかっていうぐらいに頭の回転が早く、常にニュートン力学的計算をフルで行いつつ戦況を分析する。総員第一種戦闘配置のどこぞの特務機関よりよっぽど、知略ほとばしる戦闘になっている。すごい。もはや意味が分からない。けど、すんごく面白かったです。個人的には「AQ」のほうが3倍好きですけど。