ベルセルク

祈るな! 祈れば手が塞がる! というわけでベルセルクです。これは主人公のガッツが戦闘中に祈ろうとしたファルネーゼに向かってぶちぎれたときの言葉なんですが、このマンガを象徴している一言でもあります。主人公のガッツは悲惨な境遇で周りに誰も助けてくれる人がいなく、ただ剣をふるって襲いかかってくる敵をなぎ倒しながら生きてきました。もう生きているんだか戦っているんだかわからないレベルで、死にかけている時でも敵がいたら反射的に剣を突きだすほどです。祈っている暇は当然ありません。結局、祈るっていうのは誰かなんとかしてくれということですから、自分がなんとかしないとすぐ死ぬというような状況にない、余裕のある人がやることなのです。
ベルセルクの面白さは緊張感のある戦闘の中で、こうした人生の洞察が無理のないアナロジーで語られていることにあります。説教臭くないのにメッセージ性が高いという驚異の演出があります。世界の有様と個人の内面が無駄にリンクしている少女漫画のようでもあり、またバトルを通して物語が進む安直な少年漫画のようでもあり、それでも不条理な暗黒世界観は青年漫画という、深みのある作品です。連載が終わるまでは死ねないマンガNO.1。