プラネテス

最初1巻だけ読んで、あまりにも起伏のないストーリーに投げだした。ようやく全巻読み終わり、それなりに面白かったものの、どう評価していいかよくわからなくもある。2070年代の宇宙が舞台で、軌道にちらばるゴミ(デブリ)を回収するのが主人公の仕事だ。地味な仕事である。主人公ハチマキはその地味な仕事を辞めて木星探査船の乗組員になろうとする。そうやって経験を積み、いずれは自分の宇宙船を持つという夢を持っている。自由に宇宙を航行できるというのは、たしかにロマンあふれる夢だ。ただ、この自由は、持て余してしまうほどの自由だ。ひたすら広大な虚無である宇宙を前にして、その自由に人は耐えられないのではないか、というのがテーマとしてあるようだ。
最後、ハチマキは「愛しあうことだけはやめられない」と語る。人と人のつながりを、この漠とした世界の中で、求めてしまう、ということか。なんだかすごい陳腐だけど、これでいいんだろうか。ただ実際に読んでみればわかると思うのだが、こういうありきたりの結末に至るために都合よく人物や設定が配置されているわけではない。わかりやすいメッセージよりも、むしろなんと表現していいかわからない空気、人物同士のやりとりで占められている。とくにタナベの行動原理は謎としか言いようがなく、ここをうまく解釈しない限りはプラネテスをきちんと読んだとは言えないと思う。難しい。