闇金ウシジマくん

村上龍よりも村上龍らしい、残酷で、それでいて精緻な作品。たとえば村上龍「ライン」には寂しさをかかえた人物がよく出てくるんですが、そこにおける寂しさは悲劇としては描写されていません。悲劇ならば、まだ陶酔するという逃げ場があるのですが、そんなの日常が許さない。
つまり、寂しさが日常化され、それが日々の洗濯や食器洗いのように当たり前のものになってしまい、いまさらそれを悲劇として取り出し泣いたり騒いだりするのが馬鹿らしいという、完膚なきまでに白けた現実が、そこにあるのです。
そんなの読んで何が楽しいんだ、鬱になるだけじゃないか、と思うのですが、ええ、その通り。まったく愉快ではありません。しかし、だからこそ、読む価値があるのです。泣けます。