「宝石の国」が面白い

基本的に、完結していないマンガを紹介しても、皆さん忙しいのであんまり読んでくれないし、そらそやろな、という気もするので憚られるわけなのですが、それでも、それでも言わせてほしい。「宝石の国」が素晴らしい、と。もともと、絵柄も、間の取り方も、すごい独特で、ほーん、という感じで読んでたのですが、なぜか、つい、読み返したくなるんですね。不思議と。
宝石の形の生命体が、月からやってくる仏っぽい感じの謎の敵と交戦しながら、でも日常の軽さを失わずに、のほほんとしたところもわりと多い、というそんな話です。まあ、正直言って、わけわかんないやべー設定なんです。そのあまりにも、異世界な、今ここの現実とはつながっていないところが、一種の浮遊感をもたらしていて、するすると読めたりするのです。だって、主人公のフォスフォフィライト、ほぼ原形が残っていないんじゃないかってくらい、色んな素材の複合体になってきていて、これほど物理的に変化するキャラもいないんじゃないかって感じですからね。顔まで変わって、もはや主人公交代制なんじゃないかって勢いです。これぞ非日常というか、もうまさに物語ならではの面白さだなあ、と思うわけですよ。
でも、ただ単にファンタジーというだけでなくて、何度も何度も読み返したくなるのは、やはり、ある種の軽やかさ、があるからなんじゃないかなあ、という気がしています。月に来た時、あれだけ絶望があったのに、この最新刊では、月の王子について「こいつ自分の名前呼ばれるのイヤなわけわかんないやべーやつだから……」みたいにいじりだしていて、絶望の中の軽さというか、この感じが、すごく面白いし、笑いがこみあげてくるのです。とにかく、今連載中のマンガの中では比類なき作品だとガチで思います。