1984年 / ジョージ・オーウェル

素晴らしい。この小説を単なる、管理社会批判の教訓本としてとらえるのは野暮ってもんですよ。もちろん僕も自由主義者のはしくれとしては、この本をアンチ全体主義・アンチ「大きな政府」のプロパガンダとして翼賛したい気もやまやまなのです。だが、なんか違うな、と思う。これは、運命に抗う人生の話なんです。ソ連のような社会主義国で情報統制機関に勤める役人の主人公が、体制の監視から逃れて、自分の審美感に忠実であろうする、その個々の局地戦の記録なのです。敵はあまりにも強大で、敗北は予め決しているようなものなのだけど、それでも主人公は日々の局地戦を戦い抜こうとする。本当にただそれだけの小説ってことでいいんじゃないかな、とすら思うのです。
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