実用書 第10位 マイケル・ルイス「マネーボール」
少ない投資のわりに異常なほど好成績をたたきだす野球チームのノンフィクション。莫大な金を使っているのに結果はさっぱりっていう状況はよくありますよね。世の中には、そうした状況にたいして「けしからん」と思う人と「これはチャンスだ」と思う人、2通りいると思うんですよ。なんでチャンスになるかっていうと、コストパフォーマンスの低い戦略にこだわっているところがあれば、自分がコストパフォーマンスのいい戦略で勝負して、そいつらを出し抜いてやればいいからです。なにか問題が起きるとそれを悲劇として嘆くのはマスメディアのよくやるパターンですが、それも一種のビジネスチャンスだと思えば全然余裕です。実用書 第9位 ブライアン・カプラン「選挙の経済学 投票者はなぜ愚策を選ぶのか」
経済リテラシー足りないやつ多すぎて民主制やってみたらバカな政策ばかり通るでござる の巻。結論だけから言えば衆愚政治ってことなんだけど、データが豊富で説得力抜群。けど読みづらい。実用書 第8位 スティーヴン・J・グールド「人間の測りまちがい」
9,10位でデータに基づいた良書を紹介したけど、これはそのデータがいかに恣意的に使われてきたかを暴露する本。データから結論を導いていると見せかけて、もともと持っている結論にふさわしいデータを後付けで探す例のいかに多いことか。大著なので時間がある方にオススメ。実用書 第7位 山下一仁「農協の大罪」
全体にとっては不合理なことでも自分たちに都合のいい政策をごり押しするのが利益団体ですが、この点にかけては農協は日本最強なんじゃないかと思います。もはや兼業農家は特権階級です。どうせ既得権益を攻撃する新自由主義の本でしょ? とこの手の本を敬遠する人にもオススメ。実用書 第4位 鈴木亘「だまされないための年金・医療・介護入門」
高齢化で労働人口が減っていくということがどれだけヤバイか実感できる。低福祉低負担か高福祉高負担かなんて選択は幻想で、もう若者には低福祉高負担しか残されてないよということがさらっと書いてある。まあその低福祉を中福祉ぐらいにまで持ってくために社会保障制度の改革は必要なんだけど、焼け石に水だよなあ。ともかく必読。実用書 第3位 ミルトン・フリードマン「資本主義と自由」
格差とか福祉とかの議論になると、たいていこの人が悪の親玉として叩かれるわけですが、実際は負の所得税といったベーシックインカムにもつながる政策を推奨しています。自由主義が嫌いな人はこの本を読むと驚くんじゃないだろうか。実用書 第1位 レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」
いきなりタイトルが胡散臭くなってしまいました。が、かなりマジメに人生の糧にしている本です。先進国が抱えている問題は高齢化で労働人口減っているのに国内の既得権益層が強すぎて自由主義的な政策をとれないってことにあります。これに対して規制緩和だ!経済成長だ!と真っ向勝負する方向性もあるのですが、僕は自由主義が勝つことには悲観的です(「選挙の経済学」参照)。だから一人当たりの生産性を上げるとか知識労働可能なロボットを創って労働人口を増やすといった方向性のほうがまだ勝算あると思うんです。まあ実際にどちらの道が当たるかはそれこそ「まぐれ」なのですが、どうせなら自分の好きな方向性に人生賭けます。ポストモダンとかもう古い! 時代はポストヒューマン!小説 第6位 神林長平「膚の下」
今年一番泣いた本。鼻水が出るほど泣いたのはこの作品だけだったなあ。しかし今もってなぜそこまで感動したかを説明することはできない。人によっては全く面白くないのかもしれない。小説 第3位 長谷敏司「あなたのための物語」
僕の周りではそこまで評価高くないのだけど、これは名作だと思う。死を題材にした文学の系譜の最先端。レイ・カーツワイルが描く未来像に照らすと一番リアリティを感じた。小説 第1位 伊藤計劃「ハーモニー」
この「ハーモニー」の世界観を許容するかしないかというのはこの1年ずっと考えさせられた。小説としての出来は1〜8位までどれも同率1位にしてもいいくらいなんだけど、問いかけの大きさという点でやはりこの「ハーモニー」が心に残るんだよなあ。*1:2009年以前に読んだ本でも2009年にエントリをあげた本も含めたランキングです。