OUT / 桐野夏生

パート仲間が殺した夫の死体をみんなで協力して解体する話。と書くとキチガイが主人公のサイコサスペンスかと誤解されそうですが、登場人物たちはみな「あの真面目でおとなしそうだった人がなぜ……」と近所のおばちゃんにワイドショーでコメントされてしまうような、いたって普通の人たちです。このような猟奇殺人もさして珍しくなくなってしまった今日ですが、それでも人殺しに走る心理というのはやっぱり一般人には理解し難い。でもこの作品で提示された、なぜ人を殺すのか、という背景は理解できるものでした。



閉塞感に覆われた日常の描写が上手くて、読んでるこっちが鬱になるくらいです。だからこそ、殺人をその日常をぶっ壊す手段として受け入れてしまう主人公たちに共感できます。たしかにそれはどうみてもアウトな選択だけど、でもこんなクソみたいな世界じゃ選ぶよりほかないじゃないか、というわけです。暗くて渋い作品ですが、カタルシスがありました。村上龍「共生虫」も似たようなテーマですが、こっちのほうが好きです。