ライン / 村上龍

村上龍の描写系の短編集。お互いに無関係な変人の話を無機的にくっつけて一本のラインにつなげただけの小説です。どこが面白いんだよそんな本、と呆れる人もいると思いますし、私もそんなんじゃ小説として成立しないと思います。でもなぜか面白かったです。コロコロ移り変わる視点移動もさることながら、病んでる人たちの描写になんとなく魅かれるものがありました。オチもヤマもないストーリーですが、私たちの日常もそんなオチもヤマもない行き当たりばったりのドラマです。人生はドラマだという言葉とは裏腹に、劇的になにかが変わるということはほとんどありません。

これぞ現代社会を映した鏡だ、と大仰に言うほどのものではないですが、でもやはりフィクション性を取っ払った文章には、「いい話」では決して味わえない感動がありました。
オカルトっぽい登場人物が一人だけいますが、いなくてもよかったんじゃないかと思います。