ハッカーと蟻 / ルーディ・ラッカー

サイバーパンク。近未来ハッカーSF。設定は荒唐無稽なものではなく、あと数十年テクノロジーが進歩したら十分に可能と思える範囲なので、SFというよりも、シリコンバレーが舞台のサスペンスと言った方がいいかもしれません。内容にはけっこう満足しました。百点満点なら80〜90点ぐらいです。テクノロジーの進歩が可能にするサイバースペースの描写は、未来すげー!とわくわくします。プログラマーの仕事に対する愚痴とか情熱とかも感じられて、なじみが無い分野だけに興味深かったです。人工生命ネタも扱っており、その可能性――具体的に応用できる分野、潜在的な危険性――が、学者としての視点ではなくサラリーマン開発者としての視点から語られています。
くだけた文体も性に合ってました。一番笑ったのは以下の部分。これにくすっとできる方ならより一層本書を楽しめるでしょう。

チャックは、純粋培養したフロリダのカントリーボーイを正気の沙汰じゃないくらいに濃縮したような性格