嗤う伊右衛門 / 京極夏彦

四谷怪談」のリメイク。時代小説ときくと古臭いイメージがありますが、それは本来おかしいことです。どんなに古い時代であれ、その当時を生きる人々にあってはその時代こそが今であり現代なのです。21世紀の今を通して当時を見てしまうと、どうしても古臭さというフィルターがかかってしまいますが、そのフィルターを排除し、純粋に当時の感覚を再現した小説こそ、真の時代小説といえるでしょう。そういう意味ではこの小説は成功例です。当時のみずみずしさというか生き生きしている感じがよく伝わってきます。ストーリーは怪談というよりも純愛とか切ない系って感じですが、そこそこ良いです。でもやっぱりストーリーよりも時代の描写の方を評価したいですね。