太陽の簒奪者 / 野尻抱介

突然、太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成され、日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でこの巨大リングを創造したのか? というストーリー。ファーストコンタクトものなんですが、実に良く出来たエンタメだと思います。厳めしいタイトルとハードSFというジャンルのせいか取っ付きにくいイメージがあるかもしれませんが、文体も読みやすく、ストーリー展開も巧みで、あっさりと読みきれます。謎を一歩一歩解き明かしていく科学マインドはジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」を彷彿とさせます。不満があるとすれば、既存の枠の中で限界まで純度を高めたSFという感じなので、やや新鮮味に欠ける点です。