啓示空間 / アレステア・レナルズ

天文学博士で欧州宇宙技術センターに勤務していた著者だけにガジェットの緻密さはものすごい。しかし最新のファッションに身を包んではいるが、驚くほど古めかしい骨格をもっているSFなので昔ながらのSFファンにも安心して読める宇宙ものです。滅びた異星種族の遺跡を発掘する考古学者、機械化のすすんだ宇宙船のクルー、なんかよくわからん暗殺のバイトをしている元兵士など、視点がめまぐるしく動き、しかもそのそれぞれがなじみのない非日常世界を描いているのでこのジャンルのファン以外にはきついかもしれません。しかし一方で未来のことを書いているはずなのにまるで中世のファンタジーのようなわくわく感があるのも事実です。
この世界では科学技術を自分たちで発達させるよりもすでに他の種族が発達させた科学技術を発見するなり買ったりする方が容易なのです。だから、ホーガン「星を継ぐもの」のように地味な研究はでてこず、むしろ宝探しに精を出す冒険者に近い感じがあります。この点で本書はなかなかに古典的であり、読んでいて熱くなります。まあ面白くなるまで300pくらいあって大変なのですがそこから800pくらいまでの謎解きがひたすら楽しいです。終盤の1000pあたりではすこし尻すぼみしてしまいますがそれでもエンタメとしては及第点かと。