神林長平トリビュート

タイトルそのままのアンソロジーなんですが、やっぱり円城塔のが圧倒的に面白い。なにかというと「死がはじめて公式に観測された」世界の話です。手塚治虫の「ブッダ」には、魂のプールみたいなのが出てくるじゃないですか。そのプールから下界へと派遣された魂は肉体に宿って生物として生き、肉体が死ぬと魂は原初のプールへと戻っていく。じゃあこの魂はなんなのかというと、やはり物質を生命化するなんらかの情報パターンなのではないかということになります。
では逆に物質を非生命化する、アンチ魂の情報パターンだってあるのではないだろうか。肉体を生命っぽくなくさせる、単なる物質のごときものにする、情報パターン。もしそんなものがあれば、魂が氾濫したみずみずしいこの世界を、そっけない物質のつらなりに塗り替えてしまうかもしれない。というわけで「死がはじめて公式に観測された」世界の話です。うひょう。面白そうだ。
実はこの本id:huyukiitoichiからもらったんです。いやあどうもありがとうございました。もらうときに「円城塔以外読まなくてもいいですよ」などと言われ、えー、と思ったものでしたが、今となってはまったく同感です。ほかの作者への評価も神林長平トリビュート - 基本読書とだいたい同じです。