世界の中心で、愛をさけぶ / 片山恭一

不治の病に冒された女の子を看取る話。ベッタベタな設定ですが、内容も悪い意味で村上春樹的でイマイチぴんときません。なんですか、この作り事めいた安っぽい恋愛は。出版業界は運だなあ、と実感しました。ある程度売れると、売れているという事実がさらなる購買意欲を生むというフィードバック。売れるからベストセラーなのではなく、ベストセラーだから売れるという価値と普及の逆転現象。こんなんでいいんですか。

ここまでくると失望を通り越してむしろ羨望を感じます。本書をベストセラーとして許容できる価値観・文化は素晴らしいですよ。現代日本社会のしたたかさを思い知らされました。
この本で感動できた、泣けたという人は自信を持っていい。きっとどんな劣悪な環境にも、過酷な時代にもひるむことなく、虚無から価値と感動を見出すことができます。選り好みの激しい狭量な人間ではなく、感動の閾値が低い彼らこそ、汚物を絶品に、失言を名言に、地獄を天国に変える価値創造者です。