正直、宇宙にはあんまり興味がない(ついでに言うとガンダムも観たことない)。マイクロ波送電による宇宙太陽光発電の実用化(「100年予測」参照)や、さらにその先の軌道エレベーター実用化ぐらいになってくると、新たな産業としての興味も沸いてこようが、ロケットの打ち上げに一喜一憂している程度の現状において、なにか考えるべきことがあるのだろうか、というスタンスであった。多くの人にとっても、宇宙とは、遠すぎる場所であり、人間として生きるには極限状況すぎる論外の場所なのではないだろうか。
本書も、宇宙における倫理学というよりも、人間が宇宙に行く意義とその物理的な困難性を比較したうえで、生身の人間には荷が重い、と結論づけている。これ自体に異論はないだろう。面白いのは、さらにその先で、生身の人間には無理でも、身体改造した人間にはできるかもしれないし、アップロードされた人間の知性を備える機械にだったら余裕だろう、という話になることで、宇宙という物理的なフロンティアを舞台にすることで、“人間”の定義におけるフロンティアが、実際の問題として立ち上がってくることだ。
この問題には、ポリスの時代の哲学者も、近代の自由主義者も、うまく答えることができない。
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京極夏彦をやりたくて清涼院流水となったバカミス――「うみねこのなく頃に」
孤島の密室で連続殺人事件が起きる。それも人間には絶対に不可能に思える方法で。人間にできないなら、魔女の仕業。魔女は”い”る。
いやいや、んなわけねーだろ、こんなの全部人間のトリックで説明してやるぜー、魔女の不在を証明してやる!
……という、魔女はいるよ派(というか私こそが魔女だよ派)と、魔女なんていないよ派の、逆魔女裁判が本作の前半なんですが、これだけ聞くとけっこう面白そうなんですよね。魔女だと認めてもらいたい容疑者。これは斬新。
ところが、エピソード5から、魔女なんていないよ派だった主人公が急に悟ったような顔して、魔女はいるよ派に転向して、なんでそんなことになったかも含めて謎解きしないといけなくなり、正直カオスです。迷走しているとしかいいようがない。一応、エピソード8で、すべてが明らかにされるのですが、そこに至る過程が色々おかしい。
グロテスクなんだけど読み始めたら止まらない系のマンガ5選
グロいの苦手なんですけども、たまに面白いのもあるから困る。
メイドインアビス
ぶっちゃけ、これを紹介したくてこの記事を書きました。「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されていたので読んでみたのですが、噂にたがわずスゴイ本。底の見えない大穴を探検するというシンプルな構成ながら、「風の谷のナウシカ」的な異世界生物にわくわくするし、時には「ダンジョン飯」的に食糧現地調達サバイバルものになるし、なんか絵柄もほんわかしていいっすなあ、という代物。でも、のほほんとした空気からいきなり、生きるか死ぬかのシビアな展開がまってるんですね。で、当然、グロいと。この落差はなかなかないですね。まだ完結していないのですが、今一番続きが気になるシリーズといっても差し支えありません。ベルセルク
圧倒的な完成度を誇るファンタジー。おそらくジャンヌ・ダルクとかがいた時代の中世フランスを舞台にしています。物語初期の傭兵時代編は最高でしたね。そこから人智を超えた怪物に遭遇してしまい、それを人力でなんとか倒していくあたりも面白い。徐々にファンタジー要素が強くなって、戦闘がまた別のゲームになっていくわけですが、ここもけっこう好きです。ただ最近は展開が遅すぎて正直もうちょっとなんとかなんないのかな、と思ったりしますね。さて、グロいところは、あるといえばあるんですけども、スクリーントーンをあまり使わない、パサパサとした質感のタッチなので、そこまできつくないかなあ、という感じです。まあ、例外的な場面もありますが。寄生獣
もはや定番なのかもしれないんですけども、バイオホラーの傑作といいますか、人間中心主義を木っ端微塵にぶっ飛ばす超エキサイティン!なセリフに満ちた本作は外せないような気がします。食物連鎖の中で捕食される側になってしまうという設定ですので、グロくないはずはないんですが、必然性のあるグロさですね。まあ、あと最初は気持ち悪かった触手のミギーも、より気持ち悪いのがいっぱい出てくるので、相対的にマシにみえてきて最終的にはミギーかわいいよミギーという心境に至るから不思議なものですね。アイアムアヒーロー
ゾンビもの。やっぱり最初の5巻ぐらいまでが緊張感ありましたが、謎解き要素がまだあるのでなんだかんだ追いかけています。この作者の「ルサンチマン」もけっこう面白くてオススメです。4巻で完結するので手軽。フランケン・ふらん
正直この作品を紹介するのは犯罪的というか、心の傷跡をばらまくような行為なので、とても申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、名作です、名作なのです。バイオテクノロジーに精通したブラックジャックが、毎回毎回とんでもないソリューションで患者の難題を解決するという話。なのですが、発想がマジキチなんですよね。生命倫理が体育館の裏でゲロ吐いているような、そんなホラーに仕上がってます。男二人から同時に告白された女の子が「どっちか選べなーい」みたいにぶりっこしてたら、謎の技術で身体丸ごと分裂して女の子が二人になり、内面の葛藤が物理的に存在する二つの身体同士の衝突に置き換わってしまう話とか、そんなのです。あと、1巻が一番グロいです。事故で損傷した身体を修復する間、一時的に人間の頭を〇〇に移植して、とか、もうね、ほんとやめてほしい。これは本気でやばいやつです。「アステロイド・ツリーの彼方へ (年刊日本SF傑作選)」読書会の模様
2015年の日本SFのベスト短編集。先日の誰得読書会の課題本にしました。読書会では10点満点で点数をつけて4人で選評したのですが、一番高得点を獲得したのは伴名練「なめらかな世界と、その敵」(平均8.7点)。複数の世界をなめらかに渡り歩くことが日常化した世界を映像的に面白く表現しており、絶賛されていました。
以下は、各短編の僕の採点(10点満点)、そして議論の過程で出てきた主な意見の紹介となります。 続きを読む
以下は、各短編の僕の採点(10点満点)、そして議論の過程で出てきた主な意見の紹介となります。 続きを読む