桐島、部活やめるってよ

部活ぐらい、静かに辞めさせてやれよ……。と、ジャケットの男を見ながら思っていたが、どうやらこいつは桐島ではないらしい。というか、桐島は本編中1シーンも出てこない。しかし、校内随一の強さを誇るバレー部のキャプテンが突然の退部というイベントは、周辺生徒に動揺をもたらし、クラス内政治は極度の緊張を迎える。
たかが部活になにそんな熱くなってんの? と今では言える。今でこそ言えるんだが、高校時代の部活というものは人生を全て賭けるような対象だった。そうであればこそ、部活で活躍できる桐島のような存在はヒエラルキーの頂点に立つ。しかもただの部活じゃない。傍目で見てもカッコいい体育会系で、その中でも全国大会に手が届くバレー部なのである。そりゃモテるわ桐島は……。
で、そんな世界の中心のような桐島が部活をやめるのである。桐島の身体能力頼みのバレー部は試合で負けるわ、桐島の彼女は基盤の瓦解に神経質になって周囲に当たるわ、その取り巻きは当事者の醜悪な右往左往に不快感を表明するわ、まったく関係のない映画部の連中は最下層民であるがゆえにとばっちりを食らうわ、もう、大変なのである。とくに映画部はひどい。大国のはざまに位置する弱小国家のような扱いで、観ていて同情を禁じ得ない。

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とくに田中ロミオ「AURA」は、映画部的なるものの勝利を描いており、すこぶる面白い。