「君の名は。」が好きすぎる人向けの4作品

よすぎた。
よすぎて魂が完全に浄化された。
具体的にどこがどうよかったか、これ見よがしに分析したいのだけれども、それすらかなわないほど没頭してしまった。仕方がないので、「君の名は。」が好きすぎる人向けの作品を4つ紹介してお茶を濁したい。ネタバレは容赦なくしている。


グレッグ・イーガン「貸金庫」(「祈りの海」収録)

朝起きたら見知らぬ部屋にいて、見知らぬ他人に成り変わっているという設定だと、この短編が面白い。「君の名は。」では幸いにして、東京のイケメン男子にしてくださぁい! という願いの叶った三葉であったが、これが中年のおっさんの身体だったとしたら途端にホラーだったであろう。この短編の主人公の状況はさらにひどく、朝起きて自分が誰の身体に乗り移るかは完全にランダムになっており、その度に必死に周囲の状況を把握し、うまく話を合わせて乗り切る、ということを繰り返している。固有の身体を持たない、この精神は、いったい何なのか。「君の名は。」どころの騒ぎではなく、「俺の名は。」という感じである。
わかる。爽やかな恋愛物を紹介してほしいのに、アイデンティティの話とかぶっちゃけどうでもええねん、とあなたが思っていることは痛いほどわかる。というわけで、「バタフライエフェクト」である。


バタフライ・エフェクト

簡単に言うと、例の酒をかっくらって歴史を改変しようとしたら、初期条件のわずかな違いが最終的に大きな影響を及ぼすというカオス理論に導かれて、岐阜の代わりに東京に隕石が落ちてきてしまい、完全に裏目に出てしまう、という映画。もちろん、そんな悲劇を回避するために何度も何度も例の酒をかっくらうわけですが、その都度、想像もできないような因果に翻弄されるわけですな。マジかよ、これ解あんのかよ、というハードモードなので、その分、収束を迎えたときの爽やかさは尋常ではありません。「君の名は。」のラスト好きにはたまらないはず。


ミッション:8ミニッツ

惨劇を防ぐために、惨劇を起こることを知らない無数の人々を動かす、という設定が面白いなら、この映画ですね。惨劇まで8分間しかないので、余計なことしている暇が一切なく、最短距離で、最善手を打ち続けないといけないと死ぬという緊張感があります。また、途中、ものすごく美しいシーンがあります。




森絵都「カラフル」

他人の身体だったら、どうせ自分の人生じゃないし、好き放題やってみるか、という解放感に関しては、これ。主人公は一時的に、いじめられっ子の中学生男子として生きるはめに陥ってしまい、人生縛りプレイでもしてんのこれ? という感じに戸惑いを覚えつつも、それでもできる範囲で好き勝手したりする話です。周囲の「こいつ、なんか人が変わったようになってんな」という反応が楽しかったりする点は共通してますね。こう書くとあんまり面白くなさそうですが、実はめちゃくちゃ面白いです。