池田信夫はこの矛盾については次のように整理しています。
すべての急進的改革を否定するのがバーク以来の保守主義の本流であり、ハイエクも『自由の条件』のころまでは、社会主義を否定するために改革すべてを否定する傾向が強かった。ところが晩年のハイエクは、福祉国家への批判を強め、大きな政府を抜本的に改革する必要を説くようになる。こうして、サッチャー=レーガン改革が生まれたわけだが、保守主義的改革というのは形容矛盾である。
理論的に整理すると、問題は複数均衡のもとでの均衡選択をどう考えるかということである。バーク的な保守主義によれば、現状は過去の進化の結果なので、伝統を守るべきだということになる。これは最適解が一つであれば正しい。しかし問題は、この解が全体最適になっているかどうかだ。
こうした場合に保守主義的な漸進的な改良をすると部分最適に陥ってしまう場合があります。よって、何が最適かを無数の個人が試行錯誤して探る、自由な秩序こそが全体最適を発見する道筋として望ましい、というわけです。