ポーの一族

吸血鬼の一族が人間社会にまぎれこんで、普通とは違うことに悩むというストーリーなんだけど、話の本筋とかけっこうどうでもよくて、目を見張るのは場面場面の栄華さ。とにもかくにも麗しさへと駆動されていく。美しくなければ気がすまないという連中が、渾身の華やかさを繰り出してくる。ストーリー上の悲劇でさえも、「こんなにも美しいのに可哀相な自分」という陶酔に利用されていて、もはや茫然。場合によっては閉口。三島由紀夫「春の海」とか好きなら男性でも楽しめるんじゃないですかね。とくに好きだったのは「エヴァンズの遺書」とか。