なるたる 

命が軽いなあ、とを読んでいて思った。いや、容赦なく人が死ぬ話というのは戦争ものをはじめとしてありふれているわけだけど、ふつうそういう話での人の死は重い。都市が壊滅するような事態なんてそれはもう激烈にやばいわけで、その重さに登場人物たちは苦しむ。映画「ウォッチメン」とか、そのあたりなかなか突き付けてくるものがあっていいですね。しかし、この「なるたる」。命が軽いのである。なんか発砲スチロールでできてんじゃないかっていうぐらい、軽い。その半面、肥大した自意識の懊悩のようなどうでもいい問題がやたらと重く、なかなかアンバランスだ。
スタイリッシュに街が吹っ飛ぶ中で、なんでそんなナイーヴなことをやっているのだろうと不思議になる。同じ命が軽い系でも岩明均寄生獣」は弱肉強食サバイバルであったし、外薗昌也「犬神」は適者生存+「幼年期の終わり」という感じで、命が軽いことに必然性があったのだが、「なるたる」にそうしたものはない。高橋しん最終兵器彼女」と近いと言えば近いが、それよりも後味が悪い。