ミステリを読んでいるとまるでスーパーの棚に陳列しているカップ麺のように、密室殺人とか連続殺人とかが投げ売りされていて、もう正直げんなりなんだけど、この小説ではそのげんなり感をあらかじめ主人公が取りこんでいるところが新鮮だった。どこぞの名探偵のようにオーバーリアクションで事件を盛り上げようという気が皆無で、なんかすっごいだるそうに事件に取り組んでいる。このだるそうな物腰が、ありえない動機でアホみたいな事件を起こす連中の虚構じみた空気をある程度脱臭してくれていて、一抹の清涼感を与えてくれた。……ああ、面白い、面白いよ！ 素直にそう書けばいいんだろ！
