テオ・ヤンセン展に行ってきた

円城塔のレポートを読んで矢も楯もたまらず行ってまいりました。たしかにこれはSFファン垂涎のイベントです。プラスチックの構造物からなるアートに「生命」というコンセプトを与えるだけでこれほどわくわくするようなものができるとは!

公式HPの映像を見てもらえるとわかるんですが、このビーチ・アニマル、すっごく動物くさいんですよ。構造自体はわりとシンプルなんです。会場で実際に動かしてみたんですが、あーちゃんとからくりで動いてるんだー、と実感できました。でもどこかしら博物館の骨格標本みたいな雰囲気を漂わせているのです。
ビーチ・アニマルはもともとコンピュータ上でシミュレートされる人工生命だったんですが、テオ・ヤンセンは何を思ったか、このプラスチック・チューブ製のからくりを現実世界に作ることにしました。ビーチ・アニマルの動力は風力で、風を受けて歩き回ったり、圧縮空気を利用して向きを変えたりします。経年劣化によってビーチ・アニマルは「死」にますが、その遺伝子(身体構造の一部)は次の世代に引き継がれたりします。エンジニアが改良と呼ぶであろうこの行為は、テオ・ヤンセンにとっては「生殖」であり「進化」です。花は自らは動かず昆虫を使って生殖します。ビーチ・アニマルも同じらしいです。花はその蜜でもって昆虫を引き付けますが、ビーチ・アニマルはその存在が持つ芸術的魅力が人間を動かすんでしょう。artificial life ならぬ artistic life。
うーん、でもこの定義でいくと、人間が改良を加える全ての機械は人工生命ということになってしまう。ダビスタの馬だって立派に繁殖するし、最近のポケモンもお盛んらしいですからね。*1 あと音楽だって立派に人工生命ですよ。多くの環境で繰り返し再生され、時代を経るごとにちょっとずつアレンジされる(進化する)んですから。もうちょっと自律性がないと「生命」って言えないんじゃないかなあ。まあ人間だってこの奇跡的な環境設定にかなり依存しているから、自律性なんて程度の問題かもしれないけど。ちょっと外部の手助けがあっても自律性はあると言えるのかもしれない。創造主がいなかったら自分たちの存在はなかったって信じてる人もいることだしね。

*1:初代しかプレイしてない